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二年生の一学期
🐿️
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手に取って裏返した南が言った。
「あ、これ、振袖かと思ったら、帯なのかな? でもどちらでもきれい。振袖だと思うと可愛く見えるし、帯だと思うと、清楚なお嬢さんって感じ。幼い子にも十五、六にも見える」
「どっちだろうね?」
「奈緒が作ったんじゃないの?」
「ううん。センターで三好さんからもらった」
「右のは帯と振袖っぽいところが同じ色で銀色の桜の花が描かれている紙だから、帯だと思うけど、左のは帯が薄青色なのに、振袖に見える部分が金色で桜の花が列になった柄だから、振袖なのかも」
奈緒が、南から紙人形を取って裏返す。
「背中にあるから、帯だよ」
「裏は見せないのを前提にしてるんじゃない?」
二人して、逆V字状に貼られた太い帯状の何かを見やる。
「なんにしても、奈緒の絵はとても上手で可愛いよ。今度これ描いたら? このちっちゃなやつ」
南が提案した。二センチくらいの日本紙人形を指さして続ける。
「髪長くて、ピンクのリボンつけてる。頭長くないから、また別の人が作ったのかな? 丸くて赤いほっぺで笑顔なのがかわいい。あ、でも、コンセプトがおんなじだ。やっぱり三好さんが作ったのかな? 赤い和服の柄が白と緑の桜の花だし。ちょっと腰がくの字なのが活発な感じでいいよ」
そう言って話題を切り上げる友達に、奈緒ははにかんだ笑顔を返したあと、階段へと向かう。
部屋に入ると、南がまた新しい絵を見つけて、そばに寄ってベッド越しに壁を見やる。そこには、黒くて大きな横長の台紙に、習字の半紙に描かれた絵の他、数枚の絵はがきが張り出されていて、成瀬奈緒と筆で横書きされたプレートが右中央に表示されていた。
南が関心した様子で全体を眺める。
「日本の昔話に出てくる龍みたいだね。目がほのぼのしていて優しい視線が好きだな」
「南ちゃんの不良仲間から スカ ジャンパーの話聞いて 描いた」
「一気に冷めるね、この絵に対して」と、彼女はげんなり様子で答えたが、すぐに面持ちを変えて「このカーネーションの絵、本物みたいですてき。あ、一応確認するけど、カーネーションだよね」
「うん」
「やさしいお母さん……か。で、なんでその隣のはがきに、馬の絵?」と名札の下にあった絵を指さす。
「馬だって分かる? この絵もまんざらじゃないね」
「いや、どっちかっていうと、骨折したモヒカン恐竜。上の絵も前に見た似顔絵。一番下の絵巻物みたいなのは初めて見るけど、なんでバナナ二本なの?」
かた手 かた足 だけど
みんなと一緒に動き
同じ生きるだよ
南が長半紙の文字を読んで言った。
「説得力あるよね。みんな普段は命を意識しないで生活しているけど、わたしたちは生きているんだって実感する。でもなんでバナナの絵? 新鮮でおいしそうだけど」
「もっとうまく描ければよかったんだけど、これが限界。でもこれ見て」
「あ、これ、振袖かと思ったら、帯なのかな? でもどちらでもきれい。振袖だと思うと可愛く見えるし、帯だと思うと、清楚なお嬢さんって感じ。幼い子にも十五、六にも見える」
「どっちだろうね?」
「奈緒が作ったんじゃないの?」
「ううん。センターで三好さんからもらった」
「右のは帯と振袖っぽいところが同じ色で銀色の桜の花が描かれている紙だから、帯だと思うけど、左のは帯が薄青色なのに、振袖に見える部分が金色で桜の花が列になった柄だから、振袖なのかも」
奈緒が、南から紙人形を取って裏返す。
「背中にあるから、帯だよ」
「裏は見せないのを前提にしてるんじゃない?」
二人して、逆V字状に貼られた太い帯状の何かを見やる。
「なんにしても、奈緒の絵はとても上手で可愛いよ。今度これ描いたら? このちっちゃなやつ」
南が提案した。二センチくらいの日本紙人形を指さして続ける。
「髪長くて、ピンクのリボンつけてる。頭長くないから、また別の人が作ったのかな? 丸くて赤いほっぺで笑顔なのがかわいい。あ、でも、コンセプトがおんなじだ。やっぱり三好さんが作ったのかな? 赤い和服の柄が白と緑の桜の花だし。ちょっと腰がくの字なのが活発な感じでいいよ」
そう言って話題を切り上げる友達に、奈緒ははにかんだ笑顔を返したあと、階段へと向かう。
部屋に入ると、南がまた新しい絵を見つけて、そばに寄ってベッド越しに壁を見やる。そこには、黒くて大きな横長の台紙に、習字の半紙に描かれた絵の他、数枚の絵はがきが張り出されていて、成瀬奈緒と筆で横書きされたプレートが右中央に表示されていた。
南が関心した様子で全体を眺める。
「日本の昔話に出てくる龍みたいだね。目がほのぼのしていて優しい視線が好きだな」
「南ちゃんの不良仲間から スカ ジャンパーの話聞いて 描いた」
「一気に冷めるね、この絵に対して」と、彼女はげんなり様子で答えたが、すぐに面持ちを変えて「このカーネーションの絵、本物みたいですてき。あ、一応確認するけど、カーネーションだよね」
「うん」
「やさしいお母さん……か。で、なんでその隣のはがきに、馬の絵?」と名札の下にあった絵を指さす。
「馬だって分かる? この絵もまんざらじゃないね」
「いや、どっちかっていうと、骨折したモヒカン恐竜。上の絵も前に見た似顔絵。一番下の絵巻物みたいなのは初めて見るけど、なんでバナナ二本なの?」
かた手 かた足 だけど
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南が長半紙の文字を読んで言った。
「説得力あるよね。みんな普段は命を意識しないで生活しているけど、わたしたちは生きているんだって実感する。でもなんでバナナの絵? 新鮮でおいしそうだけど」
「もっとうまく描ければよかったんだけど、これが限界。でもこれ見て」
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