FRIENDS

緒方宗谷

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二年生の一学期

🍛

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 メニューに描かれたルゥの入ったグレイビーボードとトルティーヤの絵を指さし説明する店員の話を聞いて、奈緒が訊き返す。
「カレー味ではないのですか?」
「はい。器に盛ったトルティーヤにカレーをかけるやつです」
「あれじゃなくて?」奈緒が、キッチンカーの下に設置された台の上の編み篭に並ぶ青い袋を指さした。
「あれはパンです」
「じゃあやめます」
 あっさりとあきらめた様子できっぱりと断った奈緒は、いくつかの受け答えをしたのち、去って行く店員を見やりながら、南に耳打ちをした。
「白いのが切れたのかな? こ う そ 玄米は、プラス二百 五十円、だ け ど、値段変わらず 得しちゃったね、うしし☆ よかったね」屈託のない笑顔で、胸を可愛く横にアイソレーションする。
 そして続けた。
「酵素だって、なんだか知らないけど、美容にいいよきっと。通販番組で見るやつだもん。玄米は知らないけども。あら? 南ちゃん頼んだっけ? もう忘れた」
「わたしは別のにする。ルーローハンって食べたことないから、あっちのお店で買うよ」
 前に並んでいた人がカレーを受け取って列から抜けると、奈緒は一歩前に出て、キッチンカーの窓の下に張り出されていた写真を見下ろす。
「ホットジンジャーとかりんごジュースもある。でも大将のカフェラテ二本持ってきたからいいや」
 そう呟いて、「これ出てくるんだよ。よかったねぇ、キッチンカー来てよかったねぇ」とうきうきした様子で微笑みながら、カレーを待った。
 ラミネートされたポスターを南が見やる。そこに書いてあった寄付についての紹介を彼女が読むと、奈緒が喜んだ。
「これで五円寄付になった、うふふ、いいこと した ね」
 そう言って、ガラス窓の外側に飾られた一本のカラフルコーンを眺める。
 商品を待っている時、背中に鶴の絵が描かれた濃紺の半纏を着た二人が後ろを横切った。その瞬間、奈緒の瞳が岩手の襟文字を捉え、「踊るのかな? 踊るのかな?」と大いにはしゃぐ。
「まさか、下はうちの体操着だったでしょ。岩手のコーナーでもあるんじゃないの?」
「ある」
「そうなの? どんな?」
「しらなーい」奈緒がけらけら笑った。
 しばらくして出てきたカレーの入った小どんぶりを、南が奈緒の代わりに受け取って席を探す。
「向こうのベンチが一つ空いてるから、あそこに行こう」
 そう言って、三つ並んだ背もたれの無い青いベンチへと歩みだす南の背中について行った奈緒が真ん中に座ると、彼女はそこにカレーを置いた。
「先に食べてな」
 そう言って、南は赤い台湾風の提灯を二つぶら下げた白いキッチンカーに向かって歩んでいく。
「ううん、待ってる」
 奈緒はそう答えて、離れていく背中を見送った。





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