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二年生の一学期
第百三話 世の中を司る人
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会話にひと段落ついて、二人は歩き始める。陸地に近づくと、ピヨヒヨヒヨ、ピヨヒヨヒヨと鳴き声が聞こえてきて、奈緒がその主を探した。
「変なの。黒い鳥なのに羽だけ白い。でも黒だけのもいる。違う種類かな?」
瑠衣が水面を泳ぐ水鳥を眺める。
「一塊で泳いでいるから、同じじゃなぁい?」
会話は続かなかったが少しして、不意に瑠衣が顔を上げた。そして×字に交差させた腕で深いVネックのセーターを握って言った。
「雨が降ってきたぁ。けっこう強くなりそう。確かお昼近くに雨降るって言ってたしぃ」
「“あめだより”するしかない」
「雨宿りでしょ」
「“あまだより”? あまだより。でも傘あるから大丈夫」そう言ってオレンジ色の折り畳み傘を茶色いてさげから取り出す。
「じゃあ、雨宿り必要ないね。あっ、入れてぇ」
瑠衣は熱愛カップル並みに身を寄せて腕を絡め、相合傘を満喫するかの如く幸せな笑顔を見せた。
「でもスカート濡れちゃう。それにわたしの靴、自然素材だから、すぐに水吸っちゃうの」
そう言った瑠衣は、白に黒の生地を重ねたスカートを持ち上げて、黒いハイカットスニーカーを見せた。
大きな星のロゴを眺めながら、奈緒が答える。
「それじゃあ、帰ろうか」
「ごめんね、わたしがマキシ丈のスカートなんて穿いてくるから」
「ううん、大丈夫。わたしも雨降るの 知ってたから、ちょっと描いて 帰るつもりだったよ。後ろ 濡らさないでね」
二人が振り返って、瑠衣のかかとを見下ろす。
「そうね、忘れてた」
瑠衣はお礼を言って、深いドレーンの陰影が重なり合う花房のように素敵なフィッシュテールを手繰り寄せて、降り注ぐ雨に当たらないように傘の下に入れる。
「変なの。黒い鳥なのに羽だけ白い。でも黒だけのもいる。違う種類かな?」
瑠衣が水面を泳ぐ水鳥を眺める。
「一塊で泳いでいるから、同じじゃなぁい?」
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「雨が降ってきたぁ。けっこう強くなりそう。確かお昼近くに雨降るって言ってたしぃ」
「“あめだより”するしかない」
「雨宿りでしょ」
「“あまだより”? あまだより。でも傘あるから大丈夫」そう言ってオレンジ色の折り畳み傘を茶色いてさげから取り出す。
「じゃあ、雨宿り必要ないね。あっ、入れてぇ」
瑠衣は熱愛カップル並みに身を寄せて腕を絡め、相合傘を満喫するかの如く幸せな笑顔を見せた。
「でもスカート濡れちゃう。それにわたしの靴、自然素材だから、すぐに水吸っちゃうの」
そう言った瑠衣は、白に黒の生地を重ねたスカートを持ち上げて、黒いハイカットスニーカーを見せた。
大きな星のロゴを眺めながら、奈緒が答える。
「それじゃあ、帰ろうか」
「ごめんね、わたしがマキシ丈のスカートなんて穿いてくるから」
「ううん、大丈夫。わたしも雨降るの 知ってたから、ちょっと描いて 帰るつもりだったよ。後ろ 濡らさないでね」
二人が振り返って、瑠衣のかかとを見下ろす。
「そうね、忘れてた」
瑠衣はお礼を言って、深いドレーンの陰影が重なり合う花房のように素敵なフィッシュテールを手繰り寄せて、降り注ぐ雨に当たらないように傘の下に入れる。
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