FRIENDS

緒方宗谷

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二年生の一学期

🐿️

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 南は、真剣なまなざしで正面を見据えて聞いていた。奈緒がしゃべり終わってしばらくすると、彼女なりの答えを返す。
「小さかった頃の友達とか、環境が変わる以前の友達とかが疎遠になるのは分かるけど、友達じゃなくなるっていうのには同意できないな。友達のままだよきっと。テレビでたまに小学校の友達とつるんでる大人が特集されることあるの知ってる? そうなるまでは土の中で春を待って眠る種のように発芽せずにいる時期だから、気がつけないだけなんじゃない? わたしも理沙や萌音に再会するまで、あの子たちのことなんてこれっぽちも思い出さなかったけど、あの時のわたしたちのはしゃぎようったら、童心に戻ったようだったじゃん。奈緒も見てたでしょ? それにほら、思い出してごらんよ。イベント終わってあんた最近影薄くなってるけど、あの鳥羽を、殴り合いと口げんかで負かしたんだよ。あれ以来、ウィップスは君に一目置いた感じだし、クラスの子たちも、安易にいじめてこなくなったじゃない。自信をもって」
「ナナちゃんを殴りません。誤解されるようなこと言わないで」
 南が声を上げて笑う。
「獰猛な熊みたいに襲い掛かったじゃん。狼みたいな鳥羽が、犬コロのように見えておかしかった。あのまま杏奈たちが来なかったら、勝ってたんじゃないの?」
 奈緒は、誰かに聞かれていないか不安そうに辺りを見渡し、「しぃー」と声を発して南をたしなめる。
 学校に着いてエレベーターに乗り込むと、奈緒は五階を通り越して六階で降りて歩を進める。6の文字を見つけてようやく気がついた南が、透明人間に引っ張られるようにして、この子に向かって肩を倒す。ずっこける感じで。
「ちょっとちょっと、どこ行くの?」
「教室」
「何年の」
「二年生の」
「六階には一年生のしかないでしょ。わたしたちは、今日から五階の教室に行くのよ」
「そうか」
 奈緒は首を傾げてから南について階下へと下り、壁の掲示板に張り出された大きな張り紙を見やった。
「なに書いてあるの?」奈緒が、目を凝らして文字を凝視した。
「名前」
「分かるよそれは。でもたくさんすぎて分からない。どれがわたし?」
「ちょっと待って」
 南は、ムキになって答える奈緒を制して視線を滑らせた。
「杏奈はA組だ。B組にはないね……Cにわたしの名前ある。あ、奈緒のもあるね、土屋も」
「春樹君と心愛ちゃんは? あ、ついでに粂川君」
「小山内は確かBにあったような気がする。高木は……D組だね」
 奈緒は、「そっか」と残念そうに言った。「もう行こう、教室」
「粂川はいいの?」
「あ、忘れてた」そう言って振り返る。
「まあ、そういう存在だよね、図体大きいわりに。ボケ担当と言えば聞こえがいいけど」
 二人はA組からG組までを一生懸命探したが、粂川の名前は見つからなかった。あるはずなのに。





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