FRIENDS

緒方宗谷

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一年生の三学期

🍭

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 南が問いかける。
「あ、戻って来た。杏奈、途中で抜けたけど、どこ行っていたの?」
「葵からメッセージ貰って、務君に電話してた。試合に出たんだって。なんか補欠でベンチ入りしたらしいんだけれど、武藤君が突き指して試合に出られなくなったらしいの。それで途中からライトのバックで。しかも決勝戦。すごいよね、うちのチーム。荏原地区ではどの大会でも負けなしだけど、一年生大会は今後を占う大事な大会だから、ドキドキしちゃった。ずっと葵とメッセでやり取りしていたんだけれど、けっこう接戦になっちゃって、電話越しにでも応援しようと思ってちょっと抜けてた。だから戻ってくるの遅くなっちゃった。当然優勝。それで務君に、激励とねぎらいと称賛を伝いえてきた。成瀬さんたちもねぎらっていたよって伝えておいたから。事後報告になるけどいいよねそれで。あ、こっちも試合終わったんだね。どうだった?」
「負けた」
「そっか、残念だったね」
 二人の沈んだ表情とは裏腹に、杏奈はとても嬉しそうにしていて、大変な場違いのような笑顔をこぼしている。
 違和感を覚えているような視線を向ける二人に、彼女が問う。
「小山内さんは?」
「ひだまりチームのところに行ったよ」と奈緒。
「じゃあ、わたしたちも行く? それとも帰る?」
「帰ろう。入れ代わり 立ち代わり 慰めに行っても、春樹君傷つくだけ だから」
「そうだね、わたしもそう思う。もうそろそろ陽が暮れ始める頃だから、早く帰ったほうがいいと思し。そういえば、朝、成瀬さんが言っていた可愛いパン屋さん、どうする?」
 奈緒は首を傾げて、悩む様子を見せた。
「うーん、行くのやめる。勝って、やあやあってやって、美味しいねって した かったけど、残念だから、そういう気分になれないって、分かる?」
 二人が頷く。
 さっそく踵を返して階段へと向かう杏奈の背中を追う前に、奈緒がコートを見る。汗で明滅するたくさんの星々が固まる中で、それらを霞ませるような地球と月のように向かい合う春樹と心愛がいた。
 
 品川区の一年生大会最終決戦は、激戦の末に、ひだまり高等学校をくだした不動高等学校が制して幕を閉じた。






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