FRIENDS

緒方宗谷

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一年生の三学期

🍭

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 奈緒が、怖気づいたすずらん少女の右腕を揺さぶる。
「こんど、春樹君の絵を描こおっか。こんな感じにしてこんな感じにしたら、たのしいな」
 おかしなジェスチャーを見て、南が笑う。
「なに描いてるかよく分かんないけど、励みになるよ、奈緒の絵は。息抜きになるっていうか、無心になる」
 春樹が笑顔で首肯した。
「奈緒の絵はあてになんないけど、心愛は美術部だから期待できるな」
「ひどいな、わたしも元美術部」
 奈緒が座った眼を漂わせて冷淡な笑顔を浮かべると、女子たちの間で笑いが起こる。
 その声に浸るこの子が、1オクターブ低くなじるような声を、気化した液化天然ガスのように這わせる。
「まあ、心愛ちゃんと絵は描きますよ。仲良しになりたいから。でも春樹にはあげない」
「わりぃわりぃ、わるかった。奈緒の絵にも期待してるよ」春樹が詫びを入れる。
 ポニーテール姿の梨花を含めた可愛い女子五人に囲まれた春樹を男子たちが羨む中で、ベンチメンバーでひ弱そうな二人が顔を見合わせるのを見た奈緒が、「大丈夫」と声を上げた。そして猫型ロボットふうに、「さくらのピーナッツー」と叫ぶと、名も知れぬ同級生にそれを渡す。「少ないけれど、よかったらどーぞ」
「ありがとー、マジ嬉しい」二人が感謝を述べた。
 春樹が笑う。
「まあ、女子からもらえるんなら、なんだって嬉しいよな」
 それを聞いて、奈緒がはにかむ。
「えへへ。がんばれみんな」
「「「おー!!」」」
 可愛いエールに、選手全員が喊声をあげる。奈緒はその声に応えるようにバイバイをしながら、みんなと席に戻って行った。




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