FRIENDS

緒方宗谷

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一年生の三学期

🍰

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「そんなに甘くないのね。高いのってそうなのかな?」心愛が呟く。
 そして、ガラスのカップに入った『さくら』と悩んで選んだモンブランをもう一度掬って口に運んだ。
「中のクリームも甘くない。でもそれだから栗が持つコクが味わえるのかな? 下のスポンジはちょっとブランデー風味。あら、土台がサクサクしてる。なんかマカロンみたい」
「わたしのも甘さ控えめ」杏奈がぽつりと呟いた。 
「なに買ったの?」奈緒が訊く。
「フォレノワール」レシートを見て答える。
 ショートケーキよりもさらに小ぶりなケーキを見やって、南が嘆息するように鼻から息を吐いた。
「この中で一番高そうな見た目のケーキだよね」
 左手に乗せたこげ茶のシートの上にあるケーキをもう一口食べて、杏奈が答える。
「上に削り出したチョコレートが乗ってるから、高そうに見えるだけよ。値段はみんなのと変わらないと思う。七百五十円だったかな?」
「え?」と心愛が驚く。「わたしほうが高い。わたしの八百五十円」
 すると南が輪をかけて驚いた。
「モンブランが八百五十円? インフレがここまで来てるなんて」
「関係ないと思うけど」杏奈が話の腰を折って、話題をケーキに戻す。
「四層ある。上のはクリームだけど、なんで二段目のは黄色いんだろ。三層目はチョコクリームで、一番下はチョコケーキ。チェリー入りかな? なんか、甘さで恍惚感に浸るっていうより、濃厚なチョコレートを味わうことで悦に浸るって感じね。それで、小沢さんのはどうなの?」
 南が選んだのは、全部見渡してから即決したシューアラクレーム。
「もったいぶった名前だけど、要はシュークリームだよね」と答えると、手で持ってかじりついて、「思ったよりシューがしっかりしてる。“サンダーアンダギー”というか、ドーナツ味。やっぱり甘くないよ、これも。見て、カスタードクリームかな。シューの容積以上につめられて溢れてきた。でも濃厚でシートにこぼれない」
 杏奈が仕方なさそうに笑みを浮かべた。
「サンダーアンダギーってなに? サーターアンダギーでしょ。たとえも変だけど、たとえ自体が間違ってる」
「うるさいなぁ。味を想像してよ。油で揚げたあの味。ドーナツとも共通しているあの味」
「分かる分かる」杏奈がそっけなくあしらう。






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