FRIENDS

緒方宗谷

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一年生の三学期

第八十九話 不動中学校・高等学校

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 店を出ると三人は、すぐ正面にある不動中学校・高等学校の正門を見据えた。この高校は七階建てで屋上が緑化されていて、ベランダは無くオフィスビルか病院のようだった。中高一貫校ということもあり、高校のみの学校と比べて建物が大きい。その姿は、大学病院といっても過言ではないほどで、やって来る他校の生徒はみんな驚いている様子だ。
 だが、奈緒たちは驚かなかった。施設が充実しているひだまり高校も、二十三区内では有数の大きさを誇っている。階数も同じ七階建てであるばかりか、敷地規模や建物の容積は、自分たちの高校のほうがはるかに大きかったからだ。
 ぽかんとファサードを見上げていた南が声を上げた。
「わっ、見て上、時計の横。4号館だって。何棟もあるんだ」
 正門の内側はすぐに階段になっていて、中央にある踊り場の右側には胸像が飾られている。
 それを見た奈緒が疑問を持った。
「この人だれだろ」
 南が答える。
「ああ、この人、ミスター不動だよ。イケメンコンテストで優勝した」
「へぇ、でもおじさんぽい。おじさんカフェにいそう」
 二人のおかしな会話を聞いて、杏奈が呆れた。
「もう、変なこと教えないで。誰だか知らないけど、学校の偉い人でしょ」
「なに? うそなの南ちゃん」奈緒が砕けた皿のようは表情で追及する。
「本気にしたの? 奈緒、あほだ、あんた」
 南は腹を抱えて笑いながら、叩こうとした奈緒のこぶしをひらりとかわす。そして急いで階段を駆け上がる。
 ついていったこの子が昇降口を見上げて、「いきなり玄関がある」と驚いた。
 南と一緒に見上げた杏奈が口を開いて、想像を述べる。
「敷地の都合上、仕方ないわね。中高一貫校で生徒数が多いだろうし。ひだまりが六百三十人ちょっとだから、単純にうちより三百人以上多いんじゃないかしら」
「すごっ、マンモスじゃん、ほぼマンモスじゃん」
 ぎょっとした南が玄関をくぐり、そのまま正面の扉を抜ける。
「あれ? また外に出ちゃった。なにここ、渡り廊下?」アーチ天井を見上げる。
「奥の建物のが昇降口じゃないかしら」
 安奈の指摘に南が「ああ」と答えて一瞥し、左側に張られた緑色の網の目の向こうを見やった。
「柔らかいアスファルトみたいなタイプのグラウンドだ。なんか校舎の大きさと比べて、グラウンドは殺風景で狭いね。小学校の校庭みたい」
 









 
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