FRIENDS

緒方宗谷

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一年生の三学期

🎀

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 鈴木先生がしゅっと赤丸を引く。
「二十八点。ぎりぎり赤点以上ね」
「やったぁ」奈緒が心を開放するように声を上げる。
「でも、あなたには驚かせられるわ。あとになって答えられたのとか、無理だったけれど書かれた文字を判読して、たぶん正解を書いたんだろうなって回答を合計すると、なんと四十八点。あとちょっとで平均点」
 協力していた英語の女性教師が「ほんとですよ」と頷く。「英語のテストだって、変な形のアラビア文字だかフェニキア文字みたいなのを書くんですけれど、この単語書いたんだろうなってこっちが意訳しちゃえば、平均点超えるもの。言語をつかさどる左脳がないのに、ちゃんと記憶は残っているのね」
「じゃあ点ください」奈緒が満面の笑顔で言った。
「だめ」
 数学の男性教師が口を開く。
「逆に数学はだめですね。まあ、左脳が計算をつかさどっているわけですから、仕方ないと言えば仕方ないんですけど」
「そうなんですか?」二人の教師が驚いた。
「はい。でも、時間はかかるけど、基本的な計算は結構できるんです。ただ、方程式とか記号の意味とかになるとてんでだめで。いつも赤点です。確か前回は、書いている数字と言っている数字が違うとか、短時間でした計算がめちゃくちゃで、ほぼ全滅でした」
「進級できますか?」奈緒が委縮した様子で訊く。
「うーん、それは大丈夫。時間かけさえすれば結構理解してくれるし、問題も解けるから」
 それを聞いたこの少女は、安堵して息をつく。
 英語教師がみんなに言った。
「そうだ、美術は得意らしいですね。中学までは美術部だったっていいますし、片手なのに工作とか上手らしいですよ」
 感心する先生たちに、奈緒があらたまった。
「先生たちが 補習 してくださる おかげ で す」
 しばしの休憩を経て、その後も問答が続く。ほとんどの回答が判別不能で、終始こんな調子だった。






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