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一年生の三学期
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「そうだと思う。そう思えたら、まだ見捨てられていない、希望はあるんだって思えて嬉しかった。児相にいる間に、住んでいた世田谷の家は引き払っていたし、もう中学は卒業していたから、働くこと考えたんだけれど、でもちゃんと更生したくて高校に入ることに決めた。お父さんの酒癖は前よりひどくなっていたけど、べつに暴力振るわれるわけでもないし、というか腑抜けた感じで怖いことない。お酒を除けば、家でゴロゴロおとなしくしているだけだから。でもわたしがいなかったら、たぶん堕ちるところまで堕ちて、もう人並みの生活は出来ないと思う。どこかの病院に入れられて、そのまま一生を過ごすことになるよね、たぶん。
わたしの過ちでそんなふうにはなってほしくない。一生謝っても償いきれないし許されることじゃないんだけれど、わたしはそうやって生きていくことに決めたの。
それでなんだよ。高校に入って奈緒に出会った時、なんてすごいんだろうって思った。病気で倒れて、なにもかも変わってしまったのに、一年半遅れで学校に入って、一生懸命生きてる。すごく勇気づけられたし、支えてあげたいって思った。勝手な思い込みだけれど、それがわたしの償いになることだって思えて。思い余って声かけちゃった。ごめんね、奈緒。わたしがそばにいなければ、もっと友達出来たかもしれないのに、そばに居座っちゃって」
「ううん、そんなことない」奈緒が敢然と否定した。
「ありがとう、そう言ってくれて。嘘でもうれしい。でもヤングケアラーか。人から言われると、ああやっぱりそうなんだって実感がわく。言葉は知っていたけど、まさか自分がなんて思わなかった。ていうか違うって思いたかったから、目を背けていたんだと思う。それにこんな親じゃ、恥ずかしくて誰にも相談できないしね」
南は、崖下に落ちる勢いで顎を下げて、有痛性を帯びた笑みを浮かべる。
「バイト先に電話されちゃったから、もうだめだろうな。もう付き合うのここまでにしよ。わたしら住んでる世界が違いすぎるよ。もう学校でも挨拶とかなんにもしなくていいから。学校にも連絡されているだろうし、もしかしたらクビになるかも。せっかくやり直せると思ったのに、残念だったな。もし退学になるようなことになったら、わたしのことはきれいさっぱり忘れて」
わたしの過ちでそんなふうにはなってほしくない。一生謝っても償いきれないし許されることじゃないんだけれど、わたしはそうやって生きていくことに決めたの。
それでなんだよ。高校に入って奈緒に出会った時、なんてすごいんだろうって思った。病気で倒れて、なにもかも変わってしまったのに、一年半遅れで学校に入って、一生懸命生きてる。すごく勇気づけられたし、支えてあげたいって思った。勝手な思い込みだけれど、それがわたしの償いになることだって思えて。思い余って声かけちゃった。ごめんね、奈緒。わたしがそばにいなければ、もっと友達出来たかもしれないのに、そばに居座っちゃって」
「ううん、そんなことない」奈緒が敢然と否定した。
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南は、崖下に落ちる勢いで顎を下げて、有痛性を帯びた笑みを浮かべる。
「バイト先に電話されちゃったから、もうだめだろうな。もう付き合うのここまでにしよ。わたしら住んでる世界が違いすぎるよ。もう学校でも挨拶とかなんにもしなくていいから。学校にも連絡されているだろうし、もしかしたらクビになるかも。せっかくやり直せると思ったのに、残念だったな。もし退学になるようなことになったら、わたしのことはきれいさっぱり忘れて」
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