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一年生の三学期
🐿️
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「ああ、確かに」と春樹。「ごみとか乱雑して、足の踏み場もなさそうなイメージだったな、あのおじさんを見ると。でも実際玄関も廊下もきれいだったし、洗い残しだって一つもなかったし、和室も散らかっていなかっただろ。おじさんの着ていた服も柔軟剤のいい香りがしたから、何日も着まわしてるわけではないだろうし」
「おとこしゅう、すごいと思ったけど。においなかった」奈緒が笑う。
「うん。ちゃんと風呂も入っているだろうな。部屋は、何気にちょっとおじさんくさかったけど、べつに不快ってほどじゃなかったし」
杏奈が感心を示す。
「よく見てるね。キッチンなんて、わたし見なかったよ。視界には入っていたけれど」
「でもあれだぁ。おか しいね」奈緒がトーンを上げて言った。そして小声になって「南ちゃん、ナナちゃんのこと、ふりょうふりょうって言っていた け れ ど、自分のほうがふりょう じゃんねー」と、けらけら笑った。
杏奈と春樹は、納得した様子で吹き出して、「うん、うん」と頷く。
そんな中で務が、わだかまりがあるような顔をして疑問を呈する。
「でも、警察から電話かかってきてないって言っていたけれど、どういうことだろう」
「どうせうそついてんだろ。それか電話ないか」
春樹が答えると、すぐに杏奈が否定する。
「ないってことないんじゃない? だって小沢さん、スマホ持ってるもん」
「なら嘘ついてた」
「お酒にまつわるうそは多そうだけれど、電話にうそつけるような機転利かせられるかな? あの状態で」
「無理だろうな。――じゃああれだ。家探していて、電話ひっくり返して受話器外れてるとかさ」
「なるほど」
納得のいった様子の杏奈が黙ると、春樹は話題を変えて続けた。
「それにしても、まあ支離滅裂な人だったな。まともなこと言っているようで、前と後でつじつまが合ってねーもん。酒飲む口実に無理やりこじつけてる感じ」
「ていうか、あれ聞いてまともなことって、なんで思えるの? すごい勢いで内容が湾曲していったのに」
「湾曲する前はまともだったぜ。結婚のくだりとか」
「そこだけでしょ」
「他の話も初めの二割がた。ああゆう感じで騙されるだろうね。なんとか詐欺っていうのは」
「まさか、稚拙すぎると思うわ」
「わたしは信じた」
奈緒は真剣に言ったが、みんなに聞き流されて、もう一度言った。
「わたしは信じた」
「おとこしゅう、すごいと思ったけど。においなかった」奈緒が笑う。
「うん。ちゃんと風呂も入っているだろうな。部屋は、何気にちょっとおじさんくさかったけど、べつに不快ってほどじゃなかったし」
杏奈が感心を示す。
「よく見てるね。キッチンなんて、わたし見なかったよ。視界には入っていたけれど」
「でもあれだぁ。おか しいね」奈緒がトーンを上げて言った。そして小声になって「南ちゃん、ナナちゃんのこと、ふりょうふりょうって言っていた け れ ど、自分のほうがふりょう じゃんねー」と、けらけら笑った。
杏奈と春樹は、納得した様子で吹き出して、「うん、うん」と頷く。
そんな中で務が、わだかまりがあるような顔をして疑問を呈する。
「でも、警察から電話かかってきてないって言っていたけれど、どういうことだろう」
「どうせうそついてんだろ。それか電話ないか」
春樹が答えると、すぐに杏奈が否定する。
「ないってことないんじゃない? だって小沢さん、スマホ持ってるもん」
「なら嘘ついてた」
「お酒にまつわるうそは多そうだけれど、電話にうそつけるような機転利かせられるかな? あの状態で」
「無理だろうな。――じゃああれだ。家探していて、電話ひっくり返して受話器外れてるとかさ」
「なるほど」
納得のいった様子の杏奈が黙ると、春樹は話題を変えて続けた。
「それにしても、まあ支離滅裂な人だったな。まともなこと言っているようで、前と後でつじつまが合ってねーもん。酒飲む口実に無理やりこじつけてる感じ」
「ていうか、あれ聞いてまともなことって、なんで思えるの? すごい勢いで内容が湾曲していったのに」
「湾曲する前はまともだったぜ。結婚のくだりとか」
「そこだけでしょ」
「他の話も初めの二割がた。ああゆう感じで騙されるだろうね。なんとか詐欺っていうのは」
「まさか、稚拙すぎると思うわ」
「わたしは信じた」
奈緒は真剣に言ったが、みんなに聞き流されて、もう一度言った。
「わたしは信じた」
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