FRIENDS

緒方宗谷

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一年生の二学期

🎀

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 彼女が漏らした声を聞いて、奈緒は少し考え込む。
「旗の 台の 病院に 運ばれて。幼 稚 園の 勉強をして。だん だん と 思い 出せた。大 変で し た。自分のこ と も 分から な い の に、友達も 分から ない か ら。で も それ から 思い“ど”して。つぎ来たら、ありがとうと 言うと 思った。でも 来ま せん でした。わたしも遠くの病院に 行ったから。それからというもの……。でした。
 だ か ら、友達でもないから、だめだと思うと思う――」
 巣から落ちた雛を見るような哀れさを湛えた目で奈緒を見やりながら、杏奈がこの子の言葉を強い口調で遮った。
「そんなふうに思わないで。務君も、成瀬さんのこと助けたいって言ってたし」
「つ と む く ん?」
「副委員長の。分からない? 男子で最初に助けてくれた、土屋務君。彼だけじゃないよ、高木君もおまけでついてくると思う」
「わたしは、あのひとたちが こわいから、頑張ると悪口を言われる から」
「言わせない。クラスのみんなを味方につけて頑張ろうよ。わたしに任せて。こう見えても、クラス委員長なんだから」
 杏奈は、奈緒の正面に回り込んで二の腕に手を添え、柔らかに、そして親しみやすく微笑む。目尻が上がっていてちょっときつそうなふたえの眸子は、優しさに満ちていた。
 一瞬あっけにとられたこの子だったが、遅ればせながら言葉を理解すると同時に、その瞳に光がさして、頬が高揚する。
 恐る恐る唇を開いた奈緒は、俯いたあと杏奈を見つめ、震えながらも勇気を出して言った。
「わたし、友達になりたいのですけれど、なってください」
「友達。もちろんだよ」
 その言葉を聞いて、奈緒の表情が一瞬にして花開く。
「わあーい」
 この子は、照れがこもったかすれた声で喜んだ。



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