FRIENDS

緒方宗谷

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一年生の三学期

🍺

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「だから、酒。酒は百薬の長っていうだろ。酒さえ飲めば治るから。な」
 誰も何も答えない。発言の内容を精査して咀嚼し、理解して飲み込もうとしているようだ。更につらそうなさまを見せつけるためにアピールしたいのか、表情を苦痛に歪めて続ける。
「はぁはぁ、もう堪えられそうもない、このままでは俺はだめになってしまう。だから、南のためにも頼みを聞いてくれないか?」
 迫られた奈緒が、思わず返事した。
「はいっ」
「ちょっと行って、コンビニでビール買ってきてくれ」
 一同「は?」
「いや、だからビールだって。いろいろあって今必要なんだよ」
 父親は、ちょっと垂れた目を血走らせて続ける。
「今ちょうど晩酌しようと思って缶詰開けたんだけどよ、ねーんだよ、酒が。これじゃあ、肴食えねぇじゃん。娘のために警察と対峙するのに腹すかしていたら、対決になんねぇだろ。それには一にも二にもまず酒だろう」
 大きく震える手を出してにやける。そのさまは恍惚に満ちていて、まだ飲まぬ酒から得た酔いに浸っているかのようだ。
「それじゃあ、しょうがねぇな。自分で買ってくるよ。ほれ、金よこせ」と南の父。
 ドン引き状態の四人の中から、春樹が声を上げる。
「アル中じゃん」
「ばか、ちげーよ。酒なんていつでもやめられるんだよ。でも今日は仕方ねぇだろ。警察署とかに出向かなきゃなんねぇんだからさ。景気づけに一杯やんなきゃな。一杯だけだよ、一口飲んだら、出発するからさ」
 務が心配して言った。
「お酒飲むのやめたほうがいいですよ。飲みすぎは体に毒ですし。もしよろしかったら、僕がお茶入れますから、それ飲んだら警察に行きましょう」
「うん。お酒 なんかより、南ちゃん助けたい。南ちゃんが戻って き た ら 訊けばいいよ、きっと。違うかな?」
 奈緒が追随すると、杏奈と春樹も頷く。
 南のお父さんは、あんぐりと開けた口を痙攣させながら、信じられないといった様子でみんなを見やり、激しく襲う禁断症状を押さえ込むように、両手で左右の二の腕を掴んで震えだしていた。















































 
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