FRIENDS

緒方宗谷

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一年生の三学期

第七十九話 獣道

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 空はすでに夜のとばりが下りていて、まだ日没間もないというのに、あたかも丑三つ時であるかのような静けさだった。通行人は誰もおらず、人類が消えてしまったSFドラマの中に迷い込んだかに思えるほど。頼りは街頭だけだったので視界は悪く、もはや月明かりが照らす森の中にいるのと大差がない。たぶん、雲が一つも無く、澄み切った夜空で満月だったのならば、山の中も今のこの町影と同じような明るさだろう。
 観念した様子の春樹が、立ち止まって考えあぐねる。もはや、焦燥感も感じられない雰囲気は、南の家の捜索を打ち切る言い訳を探しているようにも見える。
 そんな中、務が言った。
「もうこのブロックの中のどれかだってことは明白なんだから、一軒一軒しらみつぶしに見ていくしかないよ」
「え、でも、マンションとか何件もあるよ。表札出てなかったら分からないんじゃ……」杏奈が委縮する。
「もう遅いから、杏奈と成瀬さんは帰るといいよ。高木、送ってあげて」
「ああ……」春樹が迷った様子で答える。
 務がゆっくりと歩きながら、目当てのブロックに属する家の玄関の様子をうかがっていると、杏奈が二、三歩そばによる。
「いいよ、まだ五時台だし、務君と勉強していたとか、成瀬さんに補習してあげていたとか言えば、お母さんも怒らないと思うし」
 そう言って、おもねるようにあとを追う。
 一家の表札を見て隣家へと移動していく途中で、ふと務が立ち止まった。
「あれ? ここに道ない?」
 みんなが見ると、塀と塀の間に肩幅より少し広いくらいの通路らしき細道が見える。四人は同時に奥へと視線を走らす。
 照明の無いその一本道は奥まで見通すことかなわず、そこにあるものは何もかもが夜陰の中に溶け込んでいた。
「この奥に家なんてあるの?」杏奈が恐る恐る尋ねる。「ただの敷地の境界線でしょ、ほら、検針とかで使うやつ」
 奈緒もおじおじとしながら、杏奈の二の腕にしがみついてためらいを見せる。
「行かないよね? 行かないでしょ、行くの やめようよ」









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