FRIENDS

緒方宗谷

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一年生の三学期

🌆

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 陽が弱まるほどに増す不安を払しょくするかのように、突然春樹が、拍子を変えた口調で話し始める。
「それにしても、奈緒の人間描写はひどいな。全然違うじゃんか。二人ともえらく可愛かったぞ、特にセミロンのほう」
「そう?」奈緒があっけらかんと答える。
「ああ、奈緒の言い方だと、一人はアフロで、なんか朽ち果てて油交じりにてかった錆びた玉虫色の銅の色していて、もう一人は、常にガンくれてるいっちゃってるやつって風貌になるじゃん」
「なにそれ」杏奈がぎょっとした。
「ほんと。そんな人間いるわけないよ。アフロじゃなくて“ぱんつパーマ”。バカじゃないの、春樹君」奈緒が胡乱げに突き放す。
「奈緒が言ったんだろ。そもそもなんだよ、ぱんつパーマって。あんなかわいい子たちをそんなふうに言ったら罰当たるぞ」
 奈緒が不信感みなぎる視線で、じとっと春樹を見やる。
「どうせおっぱいでしょ。バイクの子、大きかったから」
「最低」杏奈が付け加えて、怒りを表すようにスレンダーな胸の前で腕を組んで睨む。
「ばか、なに言ってんだよ。んなわけねーだろ」
 春樹はりんごみたく真っ赤になって、ビニール袋に詰められたやつが発した声が外に漏れた時のようなくぐもった声で慌てふためいて、シドロモドロと言い訳をかます。
 杏奈が、不安めいた拍子に戻して言った。
「でも、あの二人ほんと怖かったね。うちの学校も不良多いけど、なんか質が違う。ナナたちも露出高いけど、なんか健全に思えてきた。黒髪の女の子の露出の仕方、なんかおどろおどろしいよ。胸元もそうだけど、ボトムスも腰やふくらはぎのとこレースアップサイドで」
 春樹が納得する様子で頷く。
「俺の茶髪もそうだけど、うちの不良はファッションとしてだけだからな」
「うん。あの子たちみたいなのが、本物のヤンキーって呼ばれるやつなのね。背中が凍り付くっていうけど、まさにそう。でも実際にはすんごい汗かいて、べちゃべちゃの雪みたくなる。けどあの二人見ても、“シナポン”だっけ? それがなんだか分からなかったね」
「なんか違くね?」
 三人が奈緒を見る。
「あってる。“シナポン”。だけどなんだろね、それ」
「あなたが言ったのだけれど……」杏奈が呟く。
「うん。でも忘れた。んー、でもいいの、分かんないから」
 暗黙の了解のもと合意が形成されて、この話題はうやむやの闇へと葬られた。




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