236 / 428
一年生の三学期
🐿️
しおりを挟む
春樹もスマホを見ながら、公園の位置を確認する。
「そういえば」と杏奈が言った。「わたしたちすぐに探しに出ちゃったから訊いていなかったんだけれど、その不良の子たちってどんな感じなの?」
「スケバン」
奈緒が答えると、春樹が思い出したように付け加える。
「さっきの奈緒の話じゃ、あからさまなヤンキー女子って感じだな。八十年代くらいの」
黒いハイネックを直しながら、呆れた様子で杏奈が疑問を露わにした。
「今時いるのかしら、そんな子たち」
「まあ、いないこともないんじゃね。くるぶしまであるスカートは穿いてなくとも」
「でも、見つけたとしてどうするの? 不良相手にわたしたちがどうにかできるのかしら」
心配そうにする杏奈に向けて、奈緒が小刻みに何度も頷く。
「大丈夫だよ。相手は二人だし。あと 寸胴の 豚まんがいるってゆってた、南ちゃんが」
「寸胴の豚まんって一体……」
杏奈が言葉に詰まった。想像できない様子。
そんな彼女に春樹が答える。
「まあ、どんなんでも女子なんだし、俺ら二人がいれば大丈夫だろ」
それでも心配そうな表情を消せずに、杏奈は考え込む。
「小沢さんて、本当はどんな子なのかしら。もともと不良っぽいところがあったけれど、べつに素行が悪いわけではなかったから、ただガサツで口が悪くて手が早いだけだと思っていたけど、スクーター盗んじゃうような子たちと遊んでいるようじゃ、ちょっと付き合うのも考えなきゃいけないわね」
否定しない務と春樹を見て、慌てた奈緒が会話に割り込む。
「そんな こと ないよ。たしかに杏奈ちゃんの言うと お り、ガサツで 口が悪くて 手が早くて、おしゃれでも ないし、食い意地が張っているけ れ ど、い い ひ と」
「奈緒が一番散々な言い方してるな。しかも最後の食い意地って、自分のを転嫁してない?」
春樹が苦笑すると、
「うん。わたしそこまで言っていないもん」と杏奈が彼に同調した。
「しっかしなぁ、実際どうなんだろ。盗んだ原付持ってたのは事実なんだろ。自分が盗ったんじゃないんにしても、共犯って線は拭えねぇよな。俺や奈緒は言いにしても、杏奈や務は付き合い方変えたほうがいいんじゃねーか」
狭い公園内が、どんよりとした空気に包まれつつあった。
「そういえば」と杏奈が言った。「わたしたちすぐに探しに出ちゃったから訊いていなかったんだけれど、その不良の子たちってどんな感じなの?」
「スケバン」
奈緒が答えると、春樹が思い出したように付け加える。
「さっきの奈緒の話じゃ、あからさまなヤンキー女子って感じだな。八十年代くらいの」
黒いハイネックを直しながら、呆れた様子で杏奈が疑問を露わにした。
「今時いるのかしら、そんな子たち」
「まあ、いないこともないんじゃね。くるぶしまであるスカートは穿いてなくとも」
「でも、見つけたとしてどうするの? 不良相手にわたしたちがどうにかできるのかしら」
心配そうにする杏奈に向けて、奈緒が小刻みに何度も頷く。
「大丈夫だよ。相手は二人だし。あと 寸胴の 豚まんがいるってゆってた、南ちゃんが」
「寸胴の豚まんって一体……」
杏奈が言葉に詰まった。想像できない様子。
そんな彼女に春樹が答える。
「まあ、どんなんでも女子なんだし、俺ら二人がいれば大丈夫だろ」
それでも心配そうな表情を消せずに、杏奈は考え込む。
「小沢さんて、本当はどんな子なのかしら。もともと不良っぽいところがあったけれど、べつに素行が悪いわけではなかったから、ただガサツで口が悪くて手が早いだけだと思っていたけど、スクーター盗んじゃうような子たちと遊んでいるようじゃ、ちょっと付き合うのも考えなきゃいけないわね」
否定しない務と春樹を見て、慌てた奈緒が会話に割り込む。
「そんな こと ないよ。たしかに杏奈ちゃんの言うと お り、ガサツで 口が悪くて 手が早くて、おしゃれでも ないし、食い意地が張っているけ れ ど、い い ひ と」
「奈緒が一番散々な言い方してるな。しかも最後の食い意地って、自分のを転嫁してない?」
春樹が苦笑すると、
「うん。わたしそこまで言っていないもん」と杏奈が彼に同調した。
「しっかしなぁ、実際どうなんだろ。盗んだ原付持ってたのは事実なんだろ。自分が盗ったんじゃないんにしても、共犯って線は拭えねぇよな。俺や奈緒は言いにしても、杏奈や務は付き合い方変えたほうがいいんじゃねーか」
狭い公園内が、どんよりとした空気に包まれつつあった。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~
蒼田
青春
人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。
目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。
しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。
事故から助けることで始まる活発少女との関係。
愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。
愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。
故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。
*本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる