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一年生の二学期
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そこに、沈思黙考していた春樹が助け船を出す。
「杏奈はよくやってるよ。一歩間違えば矢面に立たないといけないようなことを率先してさ。実際矢は飛んできていると思う。ストレートに言いすぎると、恨みを残すじゃん。時間はかかるだろうけど、少しずつ改善していくのがいいんじゃねぇの? 実際、魚子たちは上から目線で気が強くて、奈緒は入ったばかりでなにも言えないから変な関係になっちゃったけど、そのうち何事もなかったように変わっていくんじゃないかな。それに下手に刺激して爆発したら、こっちが悪者にされかねないじゃん」
「どういうこと?」務が訊く。
「中学の時の給食の時間に、突然キレて隣にいたやつを殴った男子がいたんだよね。すぐにやり返されて負けちゃったんだけど。理由聞いてもよく要領が掴めなくて、誰も理解できなかったんだけど、よくよく聞いていると、そいつ、殴られた奴からいつもちょっかい出されていて、給食の時間になると、並んでいる最中ずっとトレイで小刻みに小突かれ続けてたんだってさ。それが何ヶ月も続いて、ついに我慢できなくなって殴りかかったみたいなんだ」
「かわいそう」奈緒が呟く。
「うん。今思えばそうなんだけど、当時悪者にされたのは、小突かれていたそいつだった。先に殴ったほうが悪いってさ。なんでそんなこと我慢できなかったんだって逆に先生に怒られてたよ。俺もみんなもそう思ったし」
「そのあと、いじめられたでしょ、その男子」南が言った。
「ううん。キレるとなにするか分からないって思われて敬遠された」
「それだっていじめだよ」務が言う。「小突いていた男子はおとがめなし?」
「うん。今までと変わらない。どちらかっていえば災難だったねって同情されてた」
務が繋ぐ。
「恨みが生まれると、それが弱者に向くこともあるよね。特に人間関係上、流れが孤立した人に向くっていうか、誰かをスケープゴードにすることで、秩序を保とうとする変な協調性が生まれるよね。間違っているんだけれど、それが自分の安全を守ることになるし。変に声を上げても利益にならないばかりか、自分がターゲットにされかねないから、見て見ぬふりをするんだ。そういう環境を作り出さないためにも、いじめられている生徒を守ることをよしとする多数派を形成していかないと。少なくとも、いじめていた側が正当化される環境だけは避けないといけない」
重くなる空気の中で、使命感めいたものが生まれた。
「杏奈はよくやってるよ。一歩間違えば矢面に立たないといけないようなことを率先してさ。実際矢は飛んできていると思う。ストレートに言いすぎると、恨みを残すじゃん。時間はかかるだろうけど、少しずつ改善していくのがいいんじゃねぇの? 実際、魚子たちは上から目線で気が強くて、奈緒は入ったばかりでなにも言えないから変な関係になっちゃったけど、そのうち何事もなかったように変わっていくんじゃないかな。それに下手に刺激して爆発したら、こっちが悪者にされかねないじゃん」
「どういうこと?」務が訊く。
「中学の時の給食の時間に、突然キレて隣にいたやつを殴った男子がいたんだよね。すぐにやり返されて負けちゃったんだけど。理由聞いてもよく要領が掴めなくて、誰も理解できなかったんだけど、よくよく聞いていると、そいつ、殴られた奴からいつもちょっかい出されていて、給食の時間になると、並んでいる最中ずっとトレイで小刻みに小突かれ続けてたんだってさ。それが何ヶ月も続いて、ついに我慢できなくなって殴りかかったみたいなんだ」
「かわいそう」奈緒が呟く。
「うん。今思えばそうなんだけど、当時悪者にされたのは、小突かれていたそいつだった。先に殴ったほうが悪いってさ。なんでそんなこと我慢できなかったんだって逆に先生に怒られてたよ。俺もみんなもそう思ったし」
「そのあと、いじめられたでしょ、その男子」南が言った。
「ううん。キレるとなにするか分からないって思われて敬遠された」
「それだっていじめだよ」務が言う。「小突いていた男子はおとがめなし?」
「うん。今までと変わらない。どちらかっていえば災難だったねって同情されてた」
務が繋ぐ。
「恨みが生まれると、それが弱者に向くこともあるよね。特に人間関係上、流れが孤立した人に向くっていうか、誰かをスケープゴードにすることで、秩序を保とうとする変な協調性が生まれるよね。間違っているんだけれど、それが自分の安全を守ることになるし。変に声を上げても利益にならないばかりか、自分がターゲットにされかねないから、見て見ぬふりをするんだ。そういう環境を作り出さないためにも、いじめられている生徒を守ることをよしとする多数派を形成していかないと。少なくとも、いじめていた側が正当化される環境だけは避けないといけない」
重くなる空気の中で、使命感めいたものが生まれた。
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