FRIENDS

緒方宗谷

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一年生の三学期

🍭

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 務が、言葉の出ない奈緒に代わって会話を続けた。
「本人はしていないって言っていたらしいんです。事情を知ることができれば、もしかしたら僕たちでアリバイを証明できるかもしれないし」
「それは、少年課の担当者がすることですから。それより、補導された方がしでかしたことで、なにか知っていることがあれば、お話を伺いたいんですが」
「なにも知りません。小沢さんは悪いことをする人では決してないですし、僕たちもしたことありませんから」
 務は食い下がったが、淡々と受け答えをする警官の周りに、別の警官が集まってきた。いつの間にやら、カウンターの外にも三人の警官がやって来ており、奈緒たちは囲まれていた。
 それに気がついた杏奈がぎょっとして、務の肘を引っ張る。
「一旦帰りましょう。たぶん今頃、小沢さんのご家族にも連絡がいっていて、状況は把握しているだろうし、そっちに訊きにいったほうが早いと思う」
 制帽をかぶって防弾チョッキをつけた警官たちは、だれもかれもガタイがよく、明らかに柔道をしているであろう筋肉質で厚みのある躯体をしている。
 早くから囲まれたことに気がついていた春樹は、全く声を発せず俯きっぱなしであったし、勇ましかったもう一人も何も言えなくなって黙ってしまった。
 安奈が両手で務の体を押して、ナッジをかける。
「すいません。お騒がせしました」
 ここにきて主導権を握った彼女が受付の警官に会釈をして、取り囲む警官の壁の合間を縫って務を引っ張り出した。
 続けて移動させようとする春樹が、菜緒の肩に手を添えた。ここから出るように促されたこの子は、無抵抗に従って歩み始める。誰もが諦めた様子でうな垂れていた。当然、みんなを集めた当人も例外ではなかった。
「あ、かばん」と警官の声。
「あら、忘れました。ごめんなさい」奈緒が振り返る。
 受付の警官に呼び止められて、カウンターに置きっぱなしにした紺のエコバックを取って、待っていた春樹のもとに足早に駆け寄る。自分を待っていた瞳を一瞥して、ふと右を向いた。するとそこには、上の階へと続く階段があった。
 奈緒は階段を一段一段上るように見上げていく。光明が差し込んだ瞳で見つめ、そして唾を飲んだ。


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