FRIENDS

緒方宗谷

文字の大きさ
上 下
213 / 369
一年生の三学期

🐿️

しおりを挟む
 横についたいがぐり女子に、奈緒が言った。
「わたしたちが行っても、なに言っていいか 分から ないけど、褒めてあげなきゃいけない 気がする」
 奈緒たちがアリーナに行くと、並んで顧問の話を聞いていたひだまりの選手たちを、離れたところから心愛が一人で見ている。二人が彼女の傍らに寄り添ったちょうどその時、顧問の話が終わって、春樹がこっちを向いた。そして、有名なスライムみたいにへらりと笑って、頭を掻く。
「いやー、負けた負けた」
「なんだ、落ち込んでいるかと思ったのに、あっけらかんとしてる」
 南の言葉を聞き流して、春樹が問う。
「つっちーと杏奈は?」
「来てない。塾だって。土屋はバレー部の応援に駆り出されて、新人戦に出張中。残念だったね、食い下がったのに負けちゃって」
「ああ、面目ねー。あれだけ勝つって豪語してたのに、最後あんなに点差広げられて、ちょっと無様だよな」
 奈緒が一生懸命に声を絞り出して粒立てる。
「そんなこと ないよ、春樹君、かっこ よかったよ。ひょいって したら、よいよいってボールして、点とるところ」
 春の空気に色があったら、きっとこんな薄桃色だろうという笑顔で、奈緒が微笑む。
「だろ。惚れてくれてもいいんだぜ」
 密やかに、それでいて力がこもった黒い瞳で、心愛が奈緒を見つめた。
 この子は「あはは」と笑って、「ごえんりょです」と答える。
 春樹は、諦念に押し出されたようなため息を吐いて、一瞬口唇をキュッと閉めた。
「でも仕方ない。これが俺らの実力だったから。でもいい線行っただろ。全然格上の保徳にも勝てたし。旭日は去年のベスト4だぜ。うちはたしか二回戦敗退だったから。なのにあれだけの接戦をしたんだ、すごい躍進だろ」
 奈緒たちは、そんな春樹に、慰めともとれる称賛を伝えて体育館をあとにした。
 心愛が、瞳にかかったシースルーバングを指ですいて、まだ入り口の向こうに見えるひだまり選手たちに振り返る。
「絶対勝ってたよ、高木君は。だって旭日は全員二年で、一人留年してチームに残ってた去年の選手もいたらしいの。それなのに高木君は一年生で試合に出て、一番得点したんだから」




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

通り道のお仕置き

おしり丸
青春
お尻真っ赤

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

バッサリ〜由紀子の決意

S.H.L
青春
バレー部に入部した由紀子が自慢のロングヘアをバッサリ刈り上げる物語

♡ちょっとエッチなアンソロジー〜おっぱい編〜♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート詰め合わせ♡

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

13歳女子は男友達のためヌードモデルになる

矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

処理中です...