FRIENDS

緒方宗谷

文字の大きさ
上 下
202 / 370
一年生の二学期

🖼️

しおりを挟む
 そう言いながら、ゲテモノでも口に運んでいるのかというほどの奇怪な表情で鱈と玉ねぎを掬って口に入れた。
「鱈も玉ねぎも美味しいでしょ。おばさんは、奈緒の健康を考えて、こういう食事を作ってくれているんだよ」南が諭す。
「知ってる。でもお肉が食べたい。ハムとかソーセージとかちゃあ しゅーとか」
「全然お肉食べてないの?」
「うん。いつから だか 分かんないくらい」
「昨日はなに食べた?」
「餃子としゅうまいと、しょう ろん ぽー」
「食べてんじゃん。がっつり食べてんじゃん」
「ええ! どうして? 食べてないわよ。昨日は、わたしが餃子と、しゅうまいと、“そーろんぽー”食べさせてくださいってお願いして、食べたから」
「豚肉満載だよ。それでおとといは?」
「覚えてない」
 南は思い出すように言った。
「火曜日は知らないけど、月曜日は豆腐ハンバーグだったよね。そういえば、トン汁だったから豚肉入ってるよ。なんだ、けっこうお肉口にしてるじゃん」
「そうか……」
 奈緒は納得できない様子で、鱈鍋を口に運ぶ。
 南が真剣な眼差しをこの子に向ける。
「奈緒んちのごはん、相当美味しいよ。買ってきたお惣菜じゃないでしょ。おばさんが自分で手作りしてくれてるでしょ。在宅っていっても塾してるし、大変だと思うよ。すごくいいお母さんだよ」
「うん。でもしょうろんぽーは買ってきた。レンジでチンするやつ。一緒に“あしあらい”のあず急ストアまで行って」
 奈緒は嬉しそうに、母親との日々を語る。
 しばらくしてお昼を食べ終わった南が、バナナを頬張る幸せそうなこの子に言った。
「それじゃあ、そろそろ行く?」
「ううん、歯を磨いてから行く」
「ちゃんとしてるね。学校でも磨いてるでしょ」
「うん。そうしないと虫歯になっちゃうから。歯医者さんに言われた。なんと? 甘いものを食べすぎですと。虫歯の原因はそれですと。だから、わたくしは、よく 歯磨きを することにした」
「甘いものやめたほうがいいんじゃない?」
「それは無理です」奈緒は、不振の眼差しを南に向ける。そして、何かを含んだ様子で、つんと部屋を出ていく。
 しばらくして歯を磨き終わって一階から戻ってきて、「さあ、行きましょうか」と、南に声をかけ、笑顔を振りまきながら茶色のてさげを手に取る。奈緒は制服のまま着替えず、彼女とともに家を出た。



🐿️成瀬菜緒🍭
作画:緒方宗谷
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

RUBBER LADY 屈辱の性奴隷調教

RUBBER LADY
ファンタジー
RUBBER LADYが活躍するストーリーの続編です

通り道のお仕置き

おしり丸
青春
お尻真っ赤

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

生意気な女の子久しぶりのお仕置き

恩知らずなわんこ
現代文学
久しくお仕置きを受けていなかった女の子彩花はすっかり調子に乗っていた。そんな彩花はある事から久しぶりに厳しいお仕置きを受けてしまう。

君の浮気にはエロいお仕置きで済ませてあげるよ

サドラ
恋愛
浮気された主人公。主人公の彼女は学校の先輩と浮気したのだ。許せない主人公は、彼女にお仕置きすることを思いつく。

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

処理中です...