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一年生の二学期
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そう言いながら、ゲテモノでも口に運んでいるのかというほどの奇怪な表情で鱈と玉ねぎを掬って口に入れた。
「鱈も玉ねぎも美味しいでしょ。おばさんは、奈緒の健康を考えて、こういう食事を作ってくれているんだよ」南が諭す。
「知ってる。でもお肉が食べたい。ハムとかソーセージとかちゃあ しゅーとか」
「全然お肉食べてないの?」
「うん。いつから だか 分かんないくらい」
「昨日はなに食べた?」
「餃子としゅうまいと、しょう ろん ぽー」
「食べてんじゃん。がっつり食べてんじゃん」
「ええ! どうして? 食べてないわよ。昨日は、わたしが餃子と、しゅうまいと、“そーろんぽー”食べさせてくださいってお願いして、食べたから」
「豚肉満載だよ。それでおとといは?」
「覚えてない」
南は思い出すように言った。
「火曜日は知らないけど、月曜日は豆腐ハンバーグだったよね。そういえば、トン汁だったから豚肉入ってるよ。なんだ、けっこうお肉口にしてるじゃん」
「そうか……」
奈緒は納得できない様子で、鱈鍋を口に運ぶ。
南が真剣な眼差しをこの子に向ける。
「奈緒んちのごはん、相当美味しいよ。買ってきたお惣菜じゃないでしょ。おばさんが自分で手作りしてくれてるでしょ。在宅っていっても塾してるし、大変だと思うよ。すごくいいお母さんだよ」
「うん。でもしょうろんぽーは買ってきた。レンジでチンするやつ。一緒に“あしあらい”のあず急ストアまで行って」
奈緒は嬉しそうに、母親との日々を語る。
しばらくしてお昼を食べ終わった南が、バナナを頬張る幸せそうなこの子に言った。
「それじゃあ、そろそろ行く?」
「ううん、歯を磨いてから行く」
「ちゃんとしてるね。学校でも磨いてるでしょ」
「うん。そうしないと虫歯になっちゃうから。歯医者さんに言われた。なんと? 甘いものを食べすぎですと。虫歯の原因はそれですと。だから、わたくしは、よく 歯磨きを することにした」
「甘いものやめたほうがいいんじゃない?」
「それは無理です」奈緒は、不振の眼差しを南に向ける。そして、何かを含んだ様子で、つんと部屋を出ていく。
しばらくして歯を磨き終わって一階から戻ってきて、「さあ、行きましょうか」と、南に声をかけ、笑顔を振りまきながら茶色のてさげを手に取る。奈緒は制服のまま着替えず、彼女とともに家を出た。
🐿️成瀬菜緒🍭
作画:緒方宗谷
「鱈も玉ねぎも美味しいでしょ。おばさんは、奈緒の健康を考えて、こういう食事を作ってくれているんだよ」南が諭す。
「知ってる。でもお肉が食べたい。ハムとかソーセージとかちゃあ しゅーとか」
「全然お肉食べてないの?」
「うん。いつから だか 分かんないくらい」
「昨日はなに食べた?」
「餃子としゅうまいと、しょう ろん ぽー」
「食べてんじゃん。がっつり食べてんじゃん」
「ええ! どうして? 食べてないわよ。昨日は、わたしが餃子と、しゅうまいと、“そーろんぽー”食べさせてくださいってお願いして、食べたから」
「豚肉満載だよ。それでおとといは?」
「覚えてない」
南は思い出すように言った。
「火曜日は知らないけど、月曜日は豆腐ハンバーグだったよね。そういえば、トン汁だったから豚肉入ってるよ。なんだ、けっこうお肉口にしてるじゃん」
「そうか……」
奈緒は納得できない様子で、鱈鍋を口に運ぶ。
南が真剣な眼差しをこの子に向ける。
「奈緒んちのごはん、相当美味しいよ。買ってきたお惣菜じゃないでしょ。おばさんが自分で手作りしてくれてるでしょ。在宅っていっても塾してるし、大変だと思うよ。すごくいいお母さんだよ」
「うん。でもしょうろんぽーは買ってきた。レンジでチンするやつ。一緒に“あしあらい”のあず急ストアまで行って」
奈緒は嬉しそうに、母親との日々を語る。
しばらくしてお昼を食べ終わった南が、バナナを頬張る幸せそうなこの子に言った。
「それじゃあ、そろそろ行く?」
「ううん、歯を磨いてから行く」
「ちゃんとしてるね。学校でも磨いてるでしょ」
「うん。そうしないと虫歯になっちゃうから。歯医者さんに言われた。なんと? 甘いものを食べすぎですと。虫歯の原因はそれですと。だから、わたくしは、よく 歯磨きを することにした」
「甘いものやめたほうがいいんじゃない?」
「それは無理です」奈緒は、不振の眼差しを南に向ける。そして、何かを含んだ様子で、つんと部屋を出ていく。
しばらくして歯を磨き終わって一階から戻ってきて、「さあ、行きましょうか」と、南に声をかけ、笑顔を振りまきながら茶色のてさげを手に取る。奈緒は制服のまま着替えず、彼女とともに家を出た。
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作画:緒方宗谷
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