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一年生の二学期
第五十五話 花の家
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道を歩いていると、急に南が「は?」と訝しげに声をあげる。
「なにあれ、なんかすんごい脳みそむずかゆい。『止まれ右折高さ制限2.6m』だって。長くない?」
赤茶色い四角で色分けされた黒いアスファルトの道路に描かれた白い標示文字を見て、指をさしながら言った。
「うん。ここ、ほら、見て。こうこう、こうなっているから、ダメなの」
奈緒は、左手の指先から肘までを道路と平行にして、シーソーのように揺らす。
しばらく説明を聞いていた南が、ひらめいたように答える。
「高架下のこと? 確か駅出てすぐに線路の下通る道あったよね、カフェに行く時くぐったやつ。――でもそれにしても長すぎ。明日みんなにも見せてやろう」
そう言った彼女を連れて、奈緒が再び歩み始める。
「毎日この坂上って駅まで行くんだ、大変だね」
「うん、でももう慣れた」
いくつか路地を曲がった先にある奈緒の家までたどり着くと、ハンギングバスケットのつるされた木製の門の前で、南がジョーンドナープル色のレンガを見上げる。
「薄橙色の壁の角っこだけレンガになってて、なんかメルヘンで奈緒にあってる。すごいかわいいお家に住んでるんだね。瓦もピンクというかオレンジというか、ロココみたいな色していておしゃれだし」
「お母 さんの趣味。お父さんがだい いっきゅうけんちくしだから、お母さんの ために お父さんが 造ったの」
「てことは、奈緒のお父さんが設計して建てたんだ、これ」
「ううん、違う。建てたのは大工さん」
真顔で言う奈緒を見て、南は言葉に詰まる。
この子が自慢げにはにかんだ。
「わ た し も、小 学 校 三年生のと き、てつ だった」
「造るのを?」
奈緒は顔をしかめる。
「まさか。お絵描きして」
「だよね、この花はなに?」南は紫と白い花が飾られた門を見る。
「これ、これパンジー。パンジーって言うのも変だけれど」
「なにあれ、なんかすんごい脳みそむずかゆい。『止まれ右折高さ制限2.6m』だって。長くない?」
赤茶色い四角で色分けされた黒いアスファルトの道路に描かれた白い標示文字を見て、指をさしながら言った。
「うん。ここ、ほら、見て。こうこう、こうなっているから、ダメなの」
奈緒は、左手の指先から肘までを道路と平行にして、シーソーのように揺らす。
しばらく説明を聞いていた南が、ひらめいたように答える。
「高架下のこと? 確か駅出てすぐに線路の下通る道あったよね、カフェに行く時くぐったやつ。――でもそれにしても長すぎ。明日みんなにも見せてやろう」
そう言った彼女を連れて、奈緒が再び歩み始める。
「毎日この坂上って駅まで行くんだ、大変だね」
「うん、でももう慣れた」
いくつか路地を曲がった先にある奈緒の家までたどり着くと、ハンギングバスケットのつるされた木製の門の前で、南がジョーンドナープル色のレンガを見上げる。
「薄橙色の壁の角っこだけレンガになってて、なんかメルヘンで奈緒にあってる。すごいかわいいお家に住んでるんだね。瓦もピンクというかオレンジというか、ロココみたいな色していておしゃれだし」
「お母 さんの趣味。お父さんがだい いっきゅうけんちくしだから、お母さんの ために お父さんが 造ったの」
「てことは、奈緒のお父さんが設計して建てたんだ、これ」
「ううん、違う。建てたのは大工さん」
真顔で言う奈緒を見て、南は言葉に詰まる。
この子が自慢げにはにかんだ。
「わ た し も、小 学 校 三年生のと き、てつ だった」
「造るのを?」
奈緒は顔をしかめる。
「まさか。お絵描きして」
「だよね、この花はなに?」南は紫と白い花が飾られた門を見る。
「これ、これパンジー。パンジーって言うのも変だけれど」
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