FRIENDS

緒方宗谷

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一年生の二学期

🍰

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 南が言った。
「なんだろうね、これ。金粉がかかったやつ。ブルーベリーかな? 奈緒は食べたことある?」
「あるけど、知らない」
 南は、ケーキを切るのをやめて、上の濃紺の果実だけを刺して口に運ぶ。
「なにこれ、分かんない。でもブルーベリーじゃないね。なんていうかダブリンペッパーみたいな味。分かる? あの炭酸ジュースの。」
「鼻がブランデーの味がする」
「うん、コクが鼻に抜けて美味しい」
 そう答えて、南はケーキの部分を一口食べ、ねっとりとした濃厚なチョコレートを味わう。
「そういえば、ブランデーとチョコの組み合わせは最強タックだね。けっこう前に、お父さんに日本酒と大福はよく合うよねって言ったら、お前は将来のんべぇだなって褒められたことがあったけ」
「あれ、南ちゃんいくつ?」
「ん……あー、えーと、想像上の話ね、あはは」
 二人は、何かの秘密を共有したかのように微笑みあう。
「南ちゃん、今日はバイトあるの?」奈緒が訊いた。
「ううん、ないよ」
「じゃあ、うちであそぼー」
 奈緒が誘うと、南は快く承諾した。
 楽しくおしゃべりしながらゆっくりとケーキを堪能した二人は、それぞれ甘いチョコレートの余韻と店の雰囲気を身にまとって、この子の家へと向かった。

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