FRIENDS

緒方宗谷

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一年生の二学期

🐙

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 三人してそばまで行くと、先生が言った。
「それに、一パック二百円のたこ焼きが、まとめ買いで一舟百円」
 言い終わると同時に、たこ焼きを焼いていた三年の生徒たちが、一斉に「ありがとうございまーす」と叫ぶ。
「でもタコたんない」一人の女子が仕込みをしながら、焼いていた男子に伝える。
「大丈夫、今買いにやらせた」
「全力疾走。一年[の野球部員]可哀想」呼び込み担当女子が同情の眼差しを、正門ある方向に向けた。
「足鍛えられて一石二鳥。それでもたんなかったら、最後のほうのやつら、タコなしな」
 その瞬間、A組の生徒から大ブーイングが巻き起こった。
「今叫んだ野球部員、顔覚えたからな」
 焼き担当の男子に睨まれて、一部に緊張が走る。
 それを見て、呼び込みをしていた女子がカラカラと笑った。
「大丈夫、たこ半分に切らすから」
「先輩やさしいー」黄色い声が上がる。
 その歓声を、先輩女子が手のひらで制す。
「こんなわたしがいる百人一首同好会に転部するなんていうのはいかがでしょうか、野球部部員諸君」
「宣伝かよ、引き抜くな、ばか。せめて五、七、五、七、七にしろよ」
 焼き担当がつっこむと、どっと笑いが起こる。
 春樹が先生に話しかけた。
「それにしても、生徒の信頼を安く買うとはけしからんな」
「言うな。百円✕三十人だぞ。教員の安月給知らんのか」
 げらげら笑うみんなにたこ焼きがわたされていき、それを手にしたクラスメイトたちは、代わる代わる奈緒にお礼を言ってアツアツを食べ始めた。そんな中にいる奈緒は、初めてクラスの一員になったように見えた。
 最後まで開かれていた屋台B級グルメグランプリのチャンピョンメニューが決定して表彰式が終わると、MCが音頭を取って終了を宣言し、大いに盛り上がった地域交流会のプログラムが全て終了して大団円。するとそれを合図にして、帰宅する近隣の住民の波と、屋台や出し物のセットをかたづけるために分かれた各班の塊が、川の吹き溜まりに流れ着いた落ち葉のように集まり始めて、校舎のわきの一角はごった返した。
 そんな中、準備したのはディスク一枚とミラーボールだけで、かたづけるものの無い一年A組の生徒は、その場ですぐさま解散となった。
 帰宅の波と撤収の岩が入り乱れる混乱の中、生徒会としての仕事がある杏奈と務に別れを告げた奈緒は、南と春樹と共に学校をあとにして帰宅の途につく。
 名残惜しいのか、奈緒は物悲しそうな瞳で何度も振り返りながら、リズムを刻むように正門を出た。



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