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一年生の二学期
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リーダー格の彼女は細かいブレイズをポニーテールにしていて、ボディラインが浮き出るヒョウ柄でフルジップのフーディ―を羽織り、ビロードに見まがえるほどよく鞣された黒い革のミニスカート、といういでたち。靴は底の薄い黒のスニーカー。手の全ての爪には、玉虫色や銀色の満天の星空のようなネイルが伸びていて、気合の入れ方が伺える。
南が、奈緒に歩み寄りながら暖乃を見やって言った。
「その持ってるスポーツタオル、でかでかとアルファベットが描いてあるなんて、不良っぽすぎない? 毛足の長いブルゾンもなんかきれいだけどお水に見えるよ。しかもなにそれ、下のセーターざっくりしすぎでしょ。ブラ、もろ透けてんじゃん」
そして下半身に視線を落として続ける。
「足もガーター見えてるし」
ラクーンのような毛並みの白いファーブルゾンでほぼ隠れていたが、全開のジップの間から見えるボトムスは、カーゴの厚手なミニプリーツスカート。
「その靴で踊るの? ブーツ、ヒール高すぎない?」
南が最後にそう付け加えて、返答を待つように顔を上げと、エクリュ色セーターに透けるベビーブルーの胸を揺らしながら、暖乃が言った。
「まさか。外履きなのに。それよかあんたは、人のファッション批評できる口なの? ダサいよ。どこの田舎者だとスカジャン着れる? いつの時代の人よ? 背中に龍か虎の刺繍入ってんじゃないの? せめてベースボールジャケットにして」
「普通じゃん。そんなの入ってないよ」
「だからって学校にスカジャン着てこなくても」
「昨日ダッフルコート洗濯して、まだ乾いてなかったから仕方なかったの」
ポケットに入れた手でスカジャンを押し伸ばして、心配そうに自分で黒いディテールを見やりながら、続けて言った。
「ベースボールジャケットってスタジャンのことでしょ? 似たようなものじゃない。刺繍が違うだけて、柄は同じでしょ」
「分からない人。あんたが着るからダサいの。つか、鷹の刺繍が中途半端。派手じゃないのに地味でもない。そこだけぴったり」
軽くクラブステップを踏みながら、膝にダメージのある紺デニムを見やった暖乃は、そう言ってそっぽを向く。さらに、腿の中央までを覆う黒いタイツを直しながら付け加えた。
「それより小沢、差し入れとかないの? 朝っぱらから舞台裏まで来て失礼じゃん」
「ないよ。どうせあんたたちがお菓子もジュースも大量に持ち込んでいるだろうしね。それに朝っぱらってほどじゃないでしょ、もう九時過ぎてんじゃん」
すると、慌てた様子で奈緒が口を開く。
「わたしもかりんとうと、大将カフェラテ買った」
🌰小沢南🦋
作画:緒方宗谷&AIイラスト
南が、奈緒に歩み寄りながら暖乃を見やって言った。
「その持ってるスポーツタオル、でかでかとアルファベットが描いてあるなんて、不良っぽすぎない? 毛足の長いブルゾンもなんかきれいだけどお水に見えるよ。しかもなにそれ、下のセーターざっくりしすぎでしょ。ブラ、もろ透けてんじゃん」
そして下半身に視線を落として続ける。
「足もガーター見えてるし」
ラクーンのような毛並みの白いファーブルゾンでほぼ隠れていたが、全開のジップの間から見えるボトムスは、カーゴの厚手なミニプリーツスカート。
「その靴で踊るの? ブーツ、ヒール高すぎない?」
南が最後にそう付け加えて、返答を待つように顔を上げと、エクリュ色セーターに透けるベビーブルーの胸を揺らしながら、暖乃が言った。
「まさか。外履きなのに。それよかあんたは、人のファッション批評できる口なの? ダサいよ。どこの田舎者だとスカジャン着れる? いつの時代の人よ? 背中に龍か虎の刺繍入ってんじゃないの? せめてベースボールジャケットにして」
「普通じゃん。そんなの入ってないよ」
「だからって学校にスカジャン着てこなくても」
「昨日ダッフルコート洗濯して、まだ乾いてなかったから仕方なかったの」
ポケットに入れた手でスカジャンを押し伸ばして、心配そうに自分で黒いディテールを見やりながら、続けて言った。
「ベースボールジャケットってスタジャンのことでしょ? 似たようなものじゃない。刺繍が違うだけて、柄は同じでしょ」
「分からない人。あんたが着るからダサいの。つか、鷹の刺繍が中途半端。派手じゃないのに地味でもない。そこだけぴったり」
軽くクラブステップを踏みながら、膝にダメージのある紺デニムを見やった暖乃は、そう言ってそっぽを向く。さらに、腿の中央までを覆う黒いタイツを直しながら付け加えた。
「それより小沢、差し入れとかないの? 朝っぱらから舞台裏まで来て失礼じゃん」
「ないよ。どうせあんたたちがお菓子もジュースも大量に持ち込んでいるだろうしね。それに朝っぱらってほどじゃないでしょ、もう九時過ぎてんじゃん」
すると、慌てた様子で奈緒が口を開く。
「わたしもかりんとうと、大将カフェラテ買った」
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作画:緒方宗谷&AIイラスト
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