FRIENDS

緒方宗谷

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一年生の二学期

🍭

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 始まった歌はポップ調のカントリーミュージック。みんなが振り向いた先にいる音源の主は、首を傾げて自分のスマホを見下ろす。
 杏奈が呟き、暖乃が続く。
「青春まんなかストライク?」
「何年も前にはやった曲だね」
 魚子が奈緒を見やるのにつられて三人も見やると、この子は「こ れ だっ」と強く答えた。
 暖乃が呆れた様子で鼻から大きく息を吸って、示した関心と共にため息をつく。
「かおりってばどんな耳してるの? あれで分かるなんて……」
 杏奈が疑問を呈する。
「みんな、カントリーポップなんて聞くんだっけ? なんか以外」
「ふん、あたしらの趣味じゃないよ。成瀬」魚子が目の端で奈緒を見た。
 興奮した様子のこの子が語り出す。とても流暢とは言えないが。
「わたしは 中 学 生の時に、この歌に 出会った。ちょう ど受験勉強中で、とてもやめたかったけれど、頑張った。それを聞いて、わたしは 絵を描きたいです。だからわたしは、びじゅつのよい学校を 目指した のです。でも、脳 梗 塞と くも膜下出血になって、だめでした。脳みそも半分に取ったので、もう無理です。で す け れ ど も、わたしは 高校生に なれたのだから、頑張ります。諦めたけれど、わたしは高校生をしたいです」
 魚子が訊いた。
「リリックと言ってることだいぶかけ離れてるけど、あんた、こういうの聴くんだ」
「ううん、分かんないけど聴かない」
「どっちだよ」
 今度は杏奈が奈緒に訊く。
「どんなの聴くの?」
「むふっ。いーでぃえむとか。昔聴いた。若い頃」
 笑みを飲む込むエロガキがように答える。
「うそつけ」と一蹴した魚子が一呼吸置いて、鼻孔のほこりを吹き出すように鼻で笑う。
「やればいいよ。でもあたしらは協力しないよ。友達だなんて思われたら困るからね。あくまでウィップスを知ってもらう場としてステージに立つんだからね」
 奈緒は「うん」と言って、少し残念そうにしながらも大きく深く頷く。
 話を聞き終わるまでこの子を見ていた杏奈は、一瞬押し黙ってから言った。
「でも、いけないんじゃない? 部外者が来る発表会だよ。町内会とかだって関わってるし」
「あたしらに協力してよ。うまいことウィップス見せつけてやる」
 魚子にそう言われて杏奈は、うんともいいえともとれる中途半端な返事を返した。その様子をしばらく見つめたあと奈緒は、そよ風を視線ではらうようにして微笑んだ。










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