FRIENDS

緒方宗谷

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一年生の二学期

🎀

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 奈緒は首を横に振った。
 魚子が瞬息、息を吸う。
「そうだよね、本来だったら学業は学力にあった別の高校でやればいいだけだし、ダンスは習いに行けばいいだけなんだから。それなのに色々なハンデもらって、その上そこに加えて、この交流会でしょ、それじゃあ呆れてもの言えないよ。そこまでしなくてもって思うよ。これじゃあ誰も応援してくれないよね、だってひいきされすぎているあんたを外すほうに正当性があるんだから。そうじゃないと不公平だしバランスとれないじゃん。先生の話で勢いづいた生徒たちがだんまりなのも反論できないからだよ。支援だのボランティアだのって、余裕がある人が出来ることだけど、みんな部活や勉強で余裕ない。地域交流会だって授業の一環なんだから、これで点稼ぎたい子だっているんだよ。課外授業で内申よくしてでも大学受験有利にしたいの。それなのに点が稼げる身障者支援に関われてんのはあたしらだけ。しかも支援されているあんたは、もともと甘く査定されて補習三昧でおんぶにだっこ状態でしょ。あえて援助する必要ないもんね。だってあたしらより条件いいんだし、赤点取ったって卒業できるだろうしね。あの手この手を使ってもらってさ」
 静かに聞いていた杏奈が、奈緒の背中をさすって言った。
「成瀬さんだって分かってるよね。ナナたちが教えてくれること、とても感謝しているもんね。日頃からそう言っているものね」
 言っていないと言いたげに首を傾げた奈緒を気にする様子でもなく、発言を続ける。
「鍵はわたしと成瀬さんで閉めておくから、みんなは先に帰っていいよ。もう遅いし、気を付けてね。わたしは成瀬さんを送っていく」
 そう言ってウィップスを見送った杏奈が、足音が去るのを待ってから、菜緒の双眸をのぞき込んで語る。
「もう少しの辛抱だからね。なんだかんだ言われたって、格好よくダンス披露出来たら、それで勝ちなんだから」
「で も、 “バンズル”だけで踊れない」
 泣きべそをかいて恐る恐る瞳を向けるこの子の心配を否定するかのように、杏奈がにっこりと天使のように微笑む。
「バウンズね。大丈夫だから、音楽にノッてバウンズするだけで踊っているように見える。それに、成瀬さんが格好悪く見えないようにしてって、わたしからみんなにちゃんと頼んであるから安心して。わたし、魚子のスパルタで成瀬さんが傷ついていること気がついていたけど、あえて黙ってた。あと少しなにかが変われば、成瀬さん飛躍的に上手くなれるって思ったから。今振り返ってそれ間違っていなかったって思う。わたし言ったでしょう。成瀬さんのことヒロインにしてあげるって。あなたもうすぐヒロインになれるのよ。だから自信をもって。あと少し、そしたらスポットライト浴びて、ダンス披露して、みんなが拍手を送ってくれるんだからね。ほら笑って。ね。なによりガンバだよ」
 それを聞いて、奈緒は恥ずかしそうに笑った。




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