FRIENDS

一年生の二学期

🐿️

「ね？」杏奈は念を押すように首を傾けて目を見張る。
「……うん、そうだね。がんばらなきゃ」
　悲しそうにそう言って後ろを向いて、元の場所へ戻った。ぺたんとおしりをついて座り、晴信餅の小さな包みを見る。縛り目をつまんでなんとか開けようとするが、きつくてほどけない。しばらく頑張ってから諦め、ブレザーのポケットに入れた。
「いつまでも休まない」魚子が怒鳴りつける。
「はい」奈緒は慌てて練習に戻った。
　それからまたしばらくして、「休憩しよ」とつぶやいた奈緒は、大将のカフェラテのペットボトルを握って、杏奈のもとに行った。
「杏奈ちゃん、これ、やって ください」
「だから自分でできるようにならなきゃ」奈緒の手に手を添えて「リハビリだよ。成瀬さんのこと思って言ってるんだよ。ガンバだよ」と付け加える。
「うん……」
　奈緒はしょぼくれて背を向け、元の場所に戻っていく。
「がんばらなきゃ」そう言って、あひる座りで座って腿の間にペットボトルを挟み、一生懸命開けようとする。
「開かないなぁ、開かないなぁ」奈緒は、か細い割にちょっと大きめの声で一人呟いた。
「開けてあげる」
　見かねた杏奈がやって来て、すぐさま開けてくれたので、菜緒が満面の笑みを浮かべて、「ありがとー」と送る。
「うん」
　そっけなく答えた杏奈が、付け加えたように言った。
「きつく言うこともあるかもしれないけど、成瀬さんのこと思ってのことだからね。みんなも」最後の言葉と同時にウィップスを見やる。
「うん」おずおずと魚子を見た奈緒も頷く。そして安奈の背中を見送り、奈緒はごくごくと半分飲んで、練習に戻った。