FRIENDS

緒方宗谷

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一年生の二学期

🐿️

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 一瞬言葉を切る。そして明るく弾んだ声で、再び話し始めた。
「成瀬さんなら出来ると思うよ。今はつらいかもしれないけれど、これを乗り越えたら、とても上手にリズムとれるようになると思う。確かに叩かれるのはストレスになっちゃうかもしれないね。ごめんね、そこまで察してあげられなくて。わたし運動部だったから、ちょっとそんなノリが入っちゃうのかも。どうしよう。目の前に立って一緒にバウンスしてあげるとか、なにか方法ないかな?」
 そう言って、音楽に合わせてバウンスをはじめると、奈緒にも合わせてするように促す。
 非難めいた口調が一転して、とてもやさしい声音だった。言葉の変容ぶりを前にして奈緒があっけにとられていると、突然扉が開いて春樹が入ってきた。
「よう、やってる? 部活でマラソンやってんの。少し抜け出して見に来た。お、奈緒頑張ってんじゃん。でもなに、まだダウンから抜け出せないの?」
「うん。春樹君がノンちゃんとお喋りばかり して練習にならないから、無理でした」奈緒が唇を突き出す。
「うそ、俺のせい。マジごめん」
「ううん。でも春樹君が来ると、和むから、好き」
「まさか、惚れる? 俺に」
「ううん。それはないですから」
 ずっこけた春樹のそばにウキウキした様子の暖乃が寄っていって、のぞき込むように瞳を向ける。
「高木君、一年なのにベンチ入りだなんてすごいね」
 暖乃は、パドブレ気味に足を交互に送るトップロックを踏んで、春樹を褒める。
 彼は暖乃の方を向いてお礼を言ったが、すぐに視線をそらした。
 それを冷ややかに見上げてワームを繰り返してから、胸を突き出して更に身を寄せる。重ね着風の黒い長そでのシャツは胸元が大きく深くU字にえぐれていて、同じく大きくえぐれた白い生地が胸の谷間を強調していた。
「そうだ」春樹が思い出したように言った。
 持っていた黒いドラム型リュックの中から、赤地と白い花柄の角ばった巾着袋を取り出す。そして続ける。
「親戚が東京に来ててさ。お土産にこれたくさんもらったから、差し入れ」
「わーい、やったあ、晴信餅だ。いいな、山梨、行きたーい」
 暖乃がはしゃぐと魚子が食いついてきた。
「へぇー、気の利いた差し入れ、ありがとー」
 不愛想なかおりもそばに寄ってきて、仲間の間に首を突っ込む。




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