FRIENDS

緒方宗谷

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一年生の二学期

🍭

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 それをつまみながら、魚子が答えた。
「あたしら、ほんと感謝してるよ。先輩たちの署名だって集めてくれたんでしょ。先生たちはあたしらがするなら作ってもいいってくらいだから、放って置いたらダンス部できないじゃん。杏奈から聞いたよ。夢を追っている生徒の背中を押してやるのが生徒会の務めだって言ってくれたんでしょ。そういう環境を提供してあげることが、学校という場の役割だって」
 務は一瞬言葉を失う。そして二回のまばたきの間だけ黙考した。
「杏奈が言ったんだよ。僕はそれに共感して手伝っていただけだから」
「またまたご謙遜をー」
 暖乃がよいしょすると、魚子が真面目に首肯する。
「うん。杏奈がそう言ってた。本当いいコンビだね、二人は。似たようなこと、向こうも言ってた。土屋君の一言に考えさせられて、自分も動かなきゃって思えるみたい。気が強そうでいて、一人では自分からそういうこと言える子じゃないから、土屋君のおかげでずいぶんと頑張って委員長続けていられるんだよ。だから、今のあの子がいられるのも全部土屋君のおかげだと思う。あの子、面と向かって土屋君のすごさを話したりはしないだろうけど、いっつも土屋君の話するの」
 突然、暖乃が訊いた。
「土屋君て、彼女とかいるの?」
「な、なにをいきなり?」務がコーラを吹き出しそうになって慌てふためく。
「杏奈でしょ」魚子が答える。
「まさか、付き合っていないよ」
 そう慌てた彼に、言葉を続ける。
「付き合っちゃえばいいのに。それとも誰か好きな子いるの?」
「いないけど……」務は口ごもった。
「青春しなきゃ。こんな偏差値低い学校で秀才の二人が出会うなんて奇跡だよ。本来だったら二人とも、もっといい高校行っていてもおかしくないんだからさ」
「そういえば杏奈って、どうしてこの高校に入ったんだろ」
 務の質問に、ウィップスの三人が顔を見合わせる。
「……さぁ。それより土屋君はどうしてこの学校だったの?」魚子が訊き返した。
「僕は、寛容な校則と学校の充実した施設に惹かれた。それに、僕らが受験する頃にちょうど進学校への変革を打ち出したばかりで、近隣では噂になっていたでしょ。何人もの生徒を皇大[日本最高の国立大学]に送り込んだ先生が赴任してきたって。実際、授業は分かりやすくて、生徒一人一人の学力を向上させる内容だと思う」
「ああ、でもわりに偏差値低いままだよね、わたしみたく」暖乃が自虐ネタを披露して、一人で笑う。そして続けて「だから、クラブは勉強クラブなんだ、土屋君て。なにが面白くてそんなクラブに入るのか分からないけど。だって授業で勉強してるのに、クラブでも勉強するって、ショートしちゃうもん、わたしだったら」と、調子っぱずれな声を上げた。
 
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