FRIENDS

緒方宗谷

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一年生の二学期

第三十八話 スパルタ

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 同じ日の放課後、書道教室の中央でバウンスを繰り返す奈緒の周りには、ガス星雲の塊が四つできていた。一つは魚子で、スマホで動画を見ながら、映し出されたBボーイの動きを真似してフロアに足を這わせたり、仰向けになったり、うつ伏せになったりしては、画面を確認している。二つ目は暖乃。この子はダンスをせずに、鏡に向かっていろいろなポーズを決めていた。三つ目のかおりにいたっては、ダークグレーでフルジップのフーディを羽織った制服姿のまま着替えもせず、相変わらず窓際に椅子を用意して座り、ヘッドホンで音楽を聴きながらクラブステップを踏んで、ドラマーのように膝を叩いている。それをイライラした様子で見つめる四つ目は南。椅子に座る彼女は、大股を開いて腕を組んでいた。
 時計を見ると午後四時四十八分。練習が始まってから一時間経つが、始まる前に奈緒と南がおしゃべりしたくらいで、魚子に注意されて以降は、今まで全くの無言だ。
 床にいる彼女のスマホから流れる音楽はブレイクビーツで、最初の一曲目から現在に至るまで同じメロディーが相も変わらず繰り返されている。
 さすがに飽きてきた様子を見せた南が、口を開いた。
「合わせたりしないの? これじゃあ一緒に踊ってもてんでバラバラな気がするけど」
 魚子は一瞥もせず緘黙する。南は堅固な口調で「おい」と凄んだ。
 片膝を立てて座った標的は、いやいやなのだという様子を隠さない顔で煩わしそうに答えた。
「学校のダンスは、なんかユニゾン大切にするけど、本来ストリートダンスは個性のぶつかり合いだからいいの。部活の大会だとBIGとかSMALLとか種目があるのは知ってる。でも、あたしらダンス部ができても所属しないから、そういうのには出ないし」
「確かに、なんかブレイクダンスって合わせてやるイメージないもんね。そもそも、くるくる回っているのなんて、合わせようないか。はじめから合わせるの想定してないっていうか、個人戦用だよね。ユニゾンないんだ」
「あるよ。ショーケースでルーティーン。それに複数人でバトルする場合もある。でもあたしらは一対一。タイマンで即興。創作はしない。それぞれ個性があるんだから、それ見せればいい。いろいろアクロバティックな振り付けで度肝抜いてくる人たちもいるけど、そんなの見せられてもね。はぁ? そんなのサーカスでやってくださいよって感じ。わたしたちはあくまでブレイクダンスで勝負するから。つーか、小沢はいつもここにいるかバイトしてるかだけどいいの? まさかなんにもやることないなんて言わないよね。そんなんで将来大丈夫? 成績だってよくないし、卒業後も底辺続くよ。ていうか、卒業すら出来なんじゃない?」
「あ?」南が威喝して、大きく足を踏み鳴らす。






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