FRIENDS

緒方宗谷

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一年生の二学期

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　一斉に起こした笑い声が静まると、雅が言う。
「小沢さん、今弱ってるよ。いつも机に伏せってるじゃん」
「もう潰れる」
「あと一息」
　孫凛が答えて雅が返すと、るみが繋げた。
「成瀬さん次第」
「つかないよ」雅が言って、
　孫凛が「成瀬さん、意外にバカじゃないし」と付け加えると、
「こざかしい」
「ずるがしこい」
　リズムよく、雅とるみが合わせた。
「廣飯さん優しいから、離れないだろうね」
　孫凛が予想を立てると、１トーン低い声でるみが答えた。
「小沢さんだって、なんだかんだで成瀬さんのこといじめてるし」
「あれ、完全に身障者として見下してるよね」
「あいつバカだから、底辺抜け出すの初めてなんじゃない？」
「言えてる」雅が笑う。
　孫凛が言った。
「この間、成瀬さん、お弁当たかられてたよ」
「知ってる」
「可哀想」
　先ほどまでとは違って、手のひらを返したような深刻な様子のるみの声が聞こえた。
「最近、サンド取られてる」
「ていうか貢いでる」孫凛が、はしゃいだ声で答える。
「成瀬さん、分かってないよね」
「そのうちお金とかも取られちゃうんじゃないの？　うまく言いくるめられて」
　雅が茶化すように言うと、憎悪を秘めたような声で孫凛が答える。
「なんか無駄に可愛いのもむかつくし」
「そのうち誰か口説きにかかるんじゃない？」
「やだぁ」
「そんなやついたら、わたし縁切る」るみが割って入った。
「なんで？」雅が訊く。
「なにかあったら怖いじゃん」
「どして？」
「なんかほら、成瀬さん経由で」
　言葉を返さない雅の代わりに、孫凛が付け加え、るみが同調して笑った。
「男子もそれで手ぇ出さない」
「言えてる」
　奈緒は個室の中で、闇の向こうを見ようとするかのように眉をしかめて一点を凝視しながら、彼女たちが出て行くのを待つ。話が続く間、ずっと気配を消し続けていた。
　そしてその日に繰り広げられた誹りは、放課後まで及ぶ。