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一年生の二学期
第三十七話 パワーバランス
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奈緒はここ最近、ニコニコしながら微かに頭を前後させるしぐさを見せるようになっていた。だが、その楽しげな様子とは裏腹に、クラスメイトたちは、そのしぐさを快く思っていないようであった。休み時間に廊下を歩いていると、少女の後ろから声がする。この声は、同じクラスの男子、毛塚だ。
「本当、大丈夫かな、半身不随でダンスなんて。なんか今もいっちゃってるし。クラスの恥さらさなければいいけど」
話し相手が答える。この声は奈緒の隣の席の寺田。
「遠藤の親父が、うちの親父の働いている会社の取引先で働いていてさ、その会社がハラスメント撲滅とかってやってるらしい。変な噂が会社に入るとまずいから、なんにも言えねぇ」
「ああ、それ分かる。俺がよくいくコロッケ屋のおやじが、昔娘がいじめられてたんだってさ。そのせいで成瀬の話が耳に入って気になってるらしいんだよ。よくおまけしてもらってるし、なんか悪いかなぁって思って、一応傍観」
「まあ、触らぬ神に祟りなしだよな。実際いじめなんかじゃないんだろうけど、こういうのって本人がどう思っているかによるんだろ? なんにもしていないのに自殺でもされたら敵わないもんな。小沢もうるせぇしさ」
「成瀬、完全はれもの」
「言えてる」
二人は、蔑むように鼻で笑う。教室に入ったところで、この会話は終了したが、寺田が席に座るために奈緒の席のそばと通った時に、あからさまなため息をついた。
休み時間になって、この子がトイレの個室に入ると、しばらくして入ってきた幾人かの女子生徒が話し始め、笑い声が上がる。その声は全員クラスメイトだった。
雅が言った。
「でもさ、最近、小沢さんの孤立感、極まってきたよね」
「ほんと。今、榎本さんとも話してないでしょ。成瀬さんだけじゃん」
孫凛が答えると、るみが訊く。
「廣飯さんは?」
すると、雅と孫凛が交互に答えた。
「あれ違う。折り合わない。成瀬さんつながり」
「うん。廣飯さん、小沢さんと会話するのすんごいいやそうじゃん」
「顔出てる」
「結構」
「意外にも、土屋君と高木君」
「なんで小沢さんと?」るみが不満げに言った。
「わたしがいんのに?」
雅が茶化すと、笑いで砕けそうな声で、
「ぶっちゃけ」
「「「きゃはははは」」」
「本当、大丈夫かな、半身不随でダンスなんて。なんか今もいっちゃってるし。クラスの恥さらさなければいいけど」
話し相手が答える。この声は奈緒の隣の席の寺田。
「遠藤の親父が、うちの親父の働いている会社の取引先で働いていてさ、その会社がハラスメント撲滅とかってやってるらしい。変な噂が会社に入るとまずいから、なんにも言えねぇ」
「ああ、それ分かる。俺がよくいくコロッケ屋のおやじが、昔娘がいじめられてたんだってさ。そのせいで成瀬の話が耳に入って気になってるらしいんだよ。よくおまけしてもらってるし、なんか悪いかなぁって思って、一応傍観」
「まあ、触らぬ神に祟りなしだよな。実際いじめなんかじゃないんだろうけど、こういうのって本人がどう思っているかによるんだろ? なんにもしていないのに自殺でもされたら敵わないもんな。小沢もうるせぇしさ」
「成瀬、完全はれもの」
「言えてる」
二人は、蔑むように鼻で笑う。教室に入ったところで、この会話は終了したが、寺田が席に座るために奈緒の席のそばと通った時に、あからさまなため息をついた。
休み時間になって、この子がトイレの個室に入ると、しばらくして入ってきた幾人かの女子生徒が話し始め、笑い声が上がる。その声は全員クラスメイトだった。
雅が言った。
「でもさ、最近、小沢さんの孤立感、極まってきたよね」
「ほんと。今、榎本さんとも話してないでしょ。成瀬さんだけじゃん」
孫凛が答えると、るみが訊く。
「廣飯さんは?」
すると、雅と孫凛が交互に答えた。
「あれ違う。折り合わない。成瀬さんつながり」
「うん。廣飯さん、小沢さんと会話するのすんごいいやそうじゃん」
「顔出てる」
「結構」
「意外にも、土屋君と高木君」
「なんで小沢さんと?」るみが不満げに言った。
「わたしがいんのに?」
雅が茶化すと、笑いで砕けそうな声で、
「ぶっちゃけ」
「「「きゃはははは」」」
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