FRIENDS

一年生の二学期

🍭

　暖乃と魚子の返答に、杏奈が吹き出す。
「それじゃあ、アメリカのストリートとか無理じゃん。映画とかＰＶに出てくる街って８０年代のこと言っているんでしょ？　すっごい荒廃しているんだよ、あの時代って」
「「そう」」魚子と暖乃が口をそろえた。そして間を置かず魚子が続けて暖乃がかぶせる。
「だから、あたしらいかないの。パスポートも取ってないし」
「別のニュースで有名になっちゃうよ」
　三人は笑いが止まらない。
　魚子が腹を抱えて笑いを押さえる。
「今はこんなところでくすぶってるけど、いつまでもグダグダしない。お荷物抱えているから年末の大会とかは無理だし、年始も分からないけど、そのうち出る。出るからには優勝めざす」
「ごめんね、わたしのせいで」杏奈が言った。
「気にしないで、友達なんだから。杏奈の言った通り確かにいい条件だしね。交流会のあとも上手い具合にここ使えたら儲けもんだし――て、全然ストリート感ないじゃん、あたし。雑誌読んでおしゃべりしてるだけだし。でも今だってイメトレしてんだよ、いい１ムーブ思いついたから、完成したら見せてあげる。それにちゃんとたまにはダンス部にも顔出してあげるから」
　お礼を言う杏奈に、暖乃が言った。
「杏奈も一緒にやろうよ」
「無理だよ、お母さんが許してくれないし」
　すると、膝をたたんでモジモジ自分の靴ひもをいじりながら魚子が笑った。
「しろ大受かっちゃえば名誉挽回じゃん。そしたら許してくれるんじゃないの？」
「うちの親厳しいから……」杏奈が困った顔ではにかんだ。
「ふーん、杏奈んち難しいんだね。親なんて無視しちゃえばいいのに――ていうか成瀬、休まずやれよ。」
　気を抜いて話を聞いていた奈緒は慌てて、おっかなびっくりバウンズを繰り返す。
　やっぱりこの日もバウンズだけで終わってしまった。