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一年生の二学期
第三十五話 基礎練習
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放課後、奈緒がいつものようにウィップスとともに書道教室に集まってダンスの練習の準備をしていると、椅子に座って魚子と談笑していた杏奈が、ふと気がついてこの子に訊いてきた。
「成瀬さん、なにしているの?」
「準備体操」
「不思議な動きだね」
「うん、こうやって ひだりみぎの手を 組んで、右の親指が上になるように し た ら、おおきな円を えがくように 回すの」
あひる座りで手を回してしばらく円を描いたあと、左手を添えた右手を床について説明をする。
「こう し た ら、体を右 手に かけて、体を 右手に かけ るの。そう して、右手の力で体を こうこうこうってするの」
そう言いながら、体を押し上げた。
「ふーん、まぁ、気を付けてね」
杏奈はそっけなく答えておしゃべりに戻る。
一息ついた魚子が机に伏して、自分のスマホから流れる音楽を変えると、背伸びをしながら言った。
「あー、杏奈がいてくれると楽しい。あの小沢が来ると妙にしらける。このままいてほしいかな」
「ごめん、わたし今日塾があるの。だからもうすぐ交代。噂の小沢さんに」杏奈が申し訳なさそうに答える。
「説得できない? あたしらほんといじめてないんだよ」
「うん。試みてはいるんだけれどうまくいかない。みんなが成瀬さんのために貴重な時間割いてくれているのは理解してくれているとは思うんだけれど、どうしても納得してくれないの」
「委員長も大変だね。あたしだったら無視だよ、無視。実際、杏奈の頼みじゃなかったら聞かなかったし。でも今回だけだからね。もう成瀬に関わるなんていやだからね」
クラブステップから、どう格好良くフロアに入るか模索していた暖乃が話に入ってきた。
「でもまあ、いい機会だよね。わたしたち、お客さんの前で踊ることあんまないじゃん? オリンピックのフランス大会で採用されて盛り上がってはいるけれど、前みたいになるかもしれないし」
「前って?」杏奈が訊く。
「九十年代。わたし生まれてなかったんだけど、当時もブームあったんでしょ?」
「成瀬さん、なにしているの?」
「準備体操」
「不思議な動きだね」
「うん、こうやって ひだりみぎの手を 組んで、右の親指が上になるように し た ら、おおきな円を えがくように 回すの」
あひる座りで手を回してしばらく円を描いたあと、左手を添えた右手を床について説明をする。
「こう し た ら、体を右 手に かけて、体を 右手に かけ るの。そう して、右手の力で体を こうこうこうってするの」
そう言いながら、体を押し上げた。
「ふーん、まぁ、気を付けてね」
杏奈はそっけなく答えておしゃべりに戻る。
一息ついた魚子が机に伏して、自分のスマホから流れる音楽を変えると、背伸びをしながら言った。
「あー、杏奈がいてくれると楽しい。あの小沢が来ると妙にしらける。このままいてほしいかな」
「ごめん、わたし今日塾があるの。だからもうすぐ交代。噂の小沢さんに」杏奈が申し訳なさそうに答える。
「説得できない? あたしらほんといじめてないんだよ」
「うん。試みてはいるんだけれどうまくいかない。みんなが成瀬さんのために貴重な時間割いてくれているのは理解してくれているとは思うんだけれど、どうしても納得してくれないの」
「委員長も大変だね。あたしだったら無視だよ、無視。実際、杏奈の頼みじゃなかったら聞かなかったし。でも今回だけだからね。もう成瀬に関わるなんていやだからね」
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「でもまあ、いい機会だよね。わたしたち、お客さんの前で踊ることあんまないじゃん? オリンピックのフランス大会で採用されて盛り上がってはいるけれど、前みたいになるかもしれないし」
「前って?」杏奈が訊く。
「九十年代。わたし生まれてなかったんだけど、当時もブームあったんでしょ?」
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