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一年生の二学期
第二十七話 青春の始まり
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しばらくおしゃべりに興じていると、杏奈が「そうだ」と手を叩いて、みんなの注目を集めた。
「おやつ買ってあるの。キャロットケーキ。パンと成瀬さんの不思議な料理も食べておなかいっぱいだと思うから、お土産に持って帰って」
「うわあーい、やったぁ」奈緒が破裂するように喜んだ。
バスケットに入ったキャロットケーキを持ってきて、杏奈がみんなに差し出す。
「務君は男の子だから一つじゃ足りないかなって、六個。運悪く高木君と小沢さんまでいるけれど、これだけあれば、一人一個で足りるよね。余りは務君にあげる」
真っ先にお土産を取ってフィルムを開けようとする奈緒に、南が言った。
「今開けちゃだめだよ。さんざん食べたんだから、明日にしな」
「今食べる。べつばらだから」
「なにに対しての別腹よ。お好み焼きとチャーハンも食べたんだよ。あらららら」
強引に破られたフィルムの残骸を見ながら嘆く。
「しかもなに。一個食べながら、二つある土屋の物欲しげに見て。くいしんぼ」
務が優しく微笑んだ。
「いいよ、これ一つあげる。僕、何度か食べたことあるから。このお菓子屋さん、僕んちの近くにあるんだ。このキャロットケーキはいつもあって、ほかに日替わりケーキとコーヒーと、なぜかみそが売ってる」そう言って、一つ差し出す。
「なんでみそ? ウケる。ケーキに塗るのかな?」
にんまりした奈緒が鼻で笑う。
そこを南がつっこんだ。
「んなわけないでしょ」
務が続ける。
「時期にもよるけど、マロンケーキが美味しいよ。もしかしたらもう出てるかも。しっかりとした食べ応えで、とても甘くて、溶けるように美味しいの」
奈緒がまどろむように、それでいて流れるように言った。
「栗なんだから、ブランデーのような濃厚な甘みなんだろうなぁ。しっとりと潤った柔らかいくち びる のように舌に絡まるのかなぁ。いいなぁ、食べてみたいなぁ」
「すごい表現だな」春樹がくすりとした。
「まだ食べるの? ここからまだ食べるの?」
南がつっこむ横で、杏奈が笑う。
「あはは、今度また遊びにおいでよ。そうしたらおやつに買っておいてあげるから。敷き紙も可愛いのよ。ハリネズミとウサギが描かれていて、思わず取っておいておきたくなるくらい」
「他にはなにある?」奈緒が瞳を輝かせて聞き入る。
「おやつ買ってあるの。キャロットケーキ。パンと成瀬さんの不思議な料理も食べておなかいっぱいだと思うから、お土産に持って帰って」
「うわあーい、やったぁ」奈緒が破裂するように喜んだ。
バスケットに入ったキャロットケーキを持ってきて、杏奈がみんなに差し出す。
「務君は男の子だから一つじゃ足りないかなって、六個。運悪く高木君と小沢さんまでいるけれど、これだけあれば、一人一個で足りるよね。余りは務君にあげる」
真っ先にお土産を取ってフィルムを開けようとする奈緒に、南が言った。
「今開けちゃだめだよ。さんざん食べたんだから、明日にしな」
「今食べる。べつばらだから」
「なにに対しての別腹よ。お好み焼きとチャーハンも食べたんだよ。あらららら」
強引に破られたフィルムの残骸を見ながら嘆く。
「しかもなに。一個食べながら、二つある土屋の物欲しげに見て。くいしんぼ」
務が優しく微笑んだ。
「いいよ、これ一つあげる。僕、何度か食べたことあるから。このお菓子屋さん、僕んちの近くにあるんだ。このキャロットケーキはいつもあって、ほかに日替わりケーキとコーヒーと、なぜかみそが売ってる」そう言って、一つ差し出す。
「なんでみそ? ウケる。ケーキに塗るのかな?」
にんまりした奈緒が鼻で笑う。
そこを南がつっこんだ。
「んなわけないでしょ」
務が続ける。
「時期にもよるけど、マロンケーキが美味しいよ。もしかしたらもう出てるかも。しっかりとした食べ応えで、とても甘くて、溶けるように美味しいの」
奈緒がまどろむように、それでいて流れるように言った。
「栗なんだから、ブランデーのような濃厚な甘みなんだろうなぁ。しっとりと潤った柔らかいくち びる のように舌に絡まるのかなぁ。いいなぁ、食べてみたいなぁ」
「すごい表現だな」春樹がくすりとした。
「まだ食べるの? ここからまだ食べるの?」
南がつっこむ横で、杏奈が笑う。
「あはは、今度また遊びにおいでよ。そうしたらおやつに買っておいてあげるから。敷き紙も可愛いのよ。ハリネズミとウサギが描かれていて、思わず取っておいておきたくなるくらい」
「他にはなにある?」奈緒が瞳を輝かせて聞き入る。
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