FRIENDS

緒方宗谷

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一年生の二学期

🍭

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 母親は遠い目をして浸るように言って、頭を娘側に傾ける。
「集中治療室でのあなたを見たら、本当に悲しくて、どうしてあなたがこんな目に遭わなくちゃいけないのって思って、親子してもう死んでしまおうかしらって思い詰めたの。でも今となっては生きていてよかった」
「石 原 先生も 優しかったし、リハビリも してくれたし、なによりも、退院してからも、センターがあって 頑張ら せて くれたから、今があるのだと 思う。お金持ちにはなれないかもしれない け れ ど、でもいいの。もっとない人は ないから、これで満足しなくっちゃ。お母さんとお父さんには 迷惑ばかりを かけて ごめんな さい」
 奈緒が改まってぺこりとすると、母親はびっくりして言った。
「迷惑だなんてとんでもない。あなたが笑顔で過ごしてくれさえすれば、他になにもいらないわよ」
「えへへ。えへへって変だけれど、いいよね、えへへで」
「そうよ。お金の心配はいらないわ。贅沢は出来なくても、食べるに困らないだけは残すから。そのうち年金も出るし、保険もあるし」
「保険は貯金しておいて。もしもの時に 使うから。でも、ほとんど払っていないのにもらえたから、もうけたね。保険は大事」
「本当。かけていてよかったわ」
 会話が途切れると、母親は窓の外を見た。
「そうだ、夕食までまだ時間があるから、クッキーと紅茶持ってくるわね」
「うわぁい、らっきー」
 と少し低めに声を弾ませて喜んだ奈緒は、母親を見送るとすぐに、浮かべた笑みを悲しげな笑みに変える。それでも、おやつが嬉しいのか、頭を振り子のように揺らして深く微笑んで、勉強に戻る。
 この子が話した学校での出来事は、ほぼ事実ではなかった。今日、お昼休み以外で杏奈と接点はなかったし、アルファベッドついては何人かから陰険な笑い声を浴びせられて、つらそうに顔を歪めていただけだった。
 今までずっとこんな毎日だ。表立ったいじめはなくなったが、陰湿で執拗な手段へと変わっていた。そしてそれが深化すればするほどつまびらかにする機会は失われ、奈緒は母親に対してそれを黙秘するようになっていた。

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