FRIENDS

緒方宗谷

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一年生の二学期

第十五話 表情の裏側

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 おいも談議に花を咲かせた同じ日、奈緒は一人で通学路の戸越公園駅近くにある商店街を歩いていた。授業が終わって杏奈の席に向かったが、今日は塾が早くにあるからと一緒に帰ることができず、南の席を見やるもバイトがあると言って教室を出て行き、すでに席にいなかったからだ。
 こういう時、いつもこの子には、同じような出来事が降りかかっていた。
 一人で帰ろうとすると、後ろのロッカーに奈緒のリュックはない。杏奈の席を通り過ぎるさいにロッカーを一瞬見やるとすぐに、窓際にある掃除用具入れに直行して、わきに置いてあるごみ箱をのぞく。そこからリュックを引っ張り出すと、後ろから「くすくす」笑う声と、((きたなーい))と囁く女子の声が聞こえる。
 奈緒は、「うんしょ、うんしょ」と不器用にリュックを背負う。何度も振り子のように上半身を揺らして担ぐと、逃げるように教室を後にする。
「挨拶もなし?」
「わたしたちとなかよくしたくないんじゃない?」
 教室に残る女子たちは、決まって同じ言葉を口にした、
「あれじゃあ、だめだよね、友達できないよ」
「作る気ないんじゃない?」
 そんな声が廊下まで響くのだ。
 エレベーターホールへと続く短い距離の間には幾人もの生徒がいたが、誰もが奈緒をさけた。中には楽しそうにおしゃべりしていたのをやめ、穴が開くほど見つめてくる者もいる。そして通り過ぎると、何事もなかったようにまたおしゃべりに興じる。
「成瀬さんだっけ、あの子。可哀想。右手とか動かないんだって。よく学校来れるよね、わたしだったら無理、もう生きていけない」
「確かに。死んだほうがまし」
「いや、それはない」
「ワロタ」
「でも死んだも同然だよ。もう一生彼氏できないじゃん、人生終わりだよ。テニスできなくなるのもいやだし」
「青春ないじゃん。学校来る意味なんにもなし」
 何気ない会話が、奈緒の背中に刺さるように飛んできた。
 居たたまれずにエレベーターを待つことをあきらめて、階段を一段一段慎重に下りて三階の昇降口まで行くと、半開きになっていた自分のシューズロッカーの前で辺りを見渡す。周辺をさまよってトイレのごみ箱や、ジュースの自動販売機のわきや、ロッカー室も覗くが、外履き用のスニーカーは見当たらない。外に出て一階へと続く階段の中心を縦に走る植え込みを見やった時に、ようやく四葉のクローバーがワンポイントのスニーカーを見つけて、それを持って玄関に戻る。外履きに足を潜り込ませると、微かにくちゅりという水っぽい音がして、顔を歪めた。一瞬固まったが、すぐに気を取り直してそのまま履いた。



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