FRIENDS

緒方宗谷

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一年生の二学期

🍠

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「やきおもろ、食べたいなー」
 そう続けたこの子の言葉を、みんなは聞き流してお弁当をつつく。
 勇気を出すように頷いた春樹が訊いた。
「コンビニにあるんじゃね?」
「ないのっ」奈緒は、お菓子の城を壊された子供のように言った。
「怒るなよ」
 顔をしかめる彼に畳みかける。
「怒りますよ。焼いもだから いいのに」
「言えるじゃん、普通に」
「言えるわよ」
 南がペットボトルのキャップを外して、お茶を口に含む。
「スーパーの店頭にはあるよね」
 信じられないといった様子の呆れ顔で、菜緒が大きなため息をつく。
「だーかーらー、 違うの、分からない? おいもで焼いたおいもだから いいの」
「石ででしょ? スーパーのも石じゃないの?」
「知らない」ぶっきらぼうに奈緒が答える。
「もう石でいいじゃん」
 南が匙を投げると、奈緒が拾う。
「だめ、だってちっちゃいもん」
「大きさかよ」春樹がつっこむ。「じゃあさ、石焼きの小さなやつと、電子レンジでふかした大きなやつ、どっちがいい?」
「どういうこと?」
 首を傾げる奈緒に、丁寧な口調で続ける。
「石で焼いたさつまいもがいいんだろ? でもスーパーの店頭で売ってるのは小さいからいやだと」
 頷く奈緒に、春樹が言葉のペースを緩めた。
「大きなのを電子レンジで温めた二百円のさつまいもと、小さいけれどちゃんと石で焼いたさつまいも。どっちがいい? 石焼きも二百円ね」
「それは……おっきいほう。でもくるまで売って ある やつじゃなきゃ いやなの」
「じゃあ、電子レンジの大きないもと車の小さな石焼きいも」
「大きなおいもだわよ」奈緒は豪語した。
「車はどうでもいいのかよ」春樹が再びつっこむ。
「いいの。だって大きいほうがいいの。同じ値段なら、大っきなほう。え、違う?」
 奈緒が心配そうにみんなを見渡すと、全員が奈緒の言う通りだと頷く。
 楽しそうな奈緒の表情を見て、杏奈が言った。
「でもよかったぁ、成瀬さん明るくなって。もういじめられなくなったでしょう?」
 みんなが見つめてきたので、この子は控え気味に笑みを浮かべて頷く。


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