FRIENDS

緒方宗谷

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一年生の二学期

🐿️

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「あれ、サッカーコート一面分くらい飛んで行いったんじゃない?」美憂が、一緒に見学していた誰に言うわけでもなく言った。
「レギュラーじゃないのにすごいよね」恵子が答える。
「出てもないんじゃなかったけ、部活。確かダンススクール行ってるとか」
「なんかそうらしいね」
「うちダンス部ないから、お金出して習うしかないんだもんね。でもお金出してまでするかなぁ」
「わたしだったらいや」
 そうこう話しているうちに、試合はあっけなく終わった。結果は杏奈チームの自爆。
 道子が放った最後のサーブは、後衛ライトにいた暖乃のもとに飛んでいったのだが、彼女は真横に向かってレシーブで受け、ボールは奈緒の右肩に勢いよくさく裂した。
「きゃっ」と叫んだこの子は、そのまま横に一回転して膝から崩れる。
「成瀬、大丈夫?」南が駆け寄って様子をうかがう。
「う……うん」
 何が起きたか分からない様子で奈緒が答えて、肩をさする。
「右目が見えないから、分から なかった」
「おい、深谷、わざとでしょ、今の」南が立ち上がって凄んだ。
「え~? ちがうよ」暖乃が答える。
「偶然なわけないでしょ。レシーブする前に成瀬の位置を確認してたじゃん」
「してないよ」
 詰め寄ろうとした南と暖乃の間に割って入って、杏奈がなだめる。
「スポーツのことはスポーツで返そうよ。とりあえず負けた無念は葵チームに晴らしてもらうことにして――」
「じゃあ平家」南が葵に向き直って、「次の試合、相沢を狙い打って。バレー部対決。そのあと、深谷にサーブかましてよ」とズケズケと注文を放つ。
「えぇ~、わたしを巻き込まないでよ」
 葵は視線でSOS信号を発するが、誰もが見流す。
「それいじめでしょ」魚子が南に言った。
「は? あんたたちがやったことはいじめじゃないの?」
「あたしらがなにしたって言うの? ただバレーしてただけじゃん。成瀬に当たったのは全部偶然。それに平家さんは一年のレギュラーでしょ? 実力違いすぎるじゃん。これをいじめって言わずになんていうの?」
「待って」杏奈が言った。「成瀬さんを守れなかったのはわたしの責任。わたしが謝る。ね、ごめんね、成瀬さん」
「なんで廣飯が謝るの。前々からこいつら庇いすぎじゃない?」南が反駁した。
「そんなことないよ」そう言ってかおりに向き直り「でもかおり、曲がりなりにもバレー部員なんだから、今度からもう少しやさしくしてあげて、ナナだってスポーツ万能なんだから、ちょっとは手加減してくれなきゃ。のーのは前にレシーブして」。
「分かった。前にね」
 暖乃がそう笑うと、間髪入れずに南が釘を刺す。
「前に成瀬がいる時はやめろよ」
「ちぇぇ~」
 暖乃は、あからさまに不服そうに顔を歪めた。




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