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一年生の二学期
第六話 杏奈ちゃんと成瀬さん
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点差が縮まらない状態でローテーションが進み、現在は10対8。奈緒のポジションが前衛レフトに来ると、敵はネットの向こうだけではなくなった。
後ろにいる暖乃がアンダーレシーブをすると、ボールは必ずこの子の後頭部に当たった。そのたびに「ごめーん、成瀬、わざとじゃないよ。わたし下手だから」と、彼女は悪びれる様子もなく嗤って言った。
それを見て鼻を吹いてにやけた魚子は、アンダーサーブでライトのバックへとボールを放る。そこにいた花は、あまり運動神経のよい子ではなく、受けるのに失敗。それを杏奈が飛び込んでワン ハンド レシーブ。ネットを越えた先でライトの雅と美紀がお見合いをしてしまい。サーブ権が杏奈チームに返ってきた。12対11へと点差は縮まっていたが、油断は出来ない。またもかおりにサーブの番が来たからだ。
眉が隠れるぱっつんバングの下に光るかおりの双眸を見て、奈緒は不安そうに杏奈に視線を送る。
「成瀬さん、ネットのそばに隠れているといいよ」
そう杏奈に言われて「うん」と頷いた奈緒が「いそげっ、いそげっ」とぴょこぴょこ走るが、かおりはそれを待たず、移動中の彼女めがけてサーブを放った。
すごい音を立てた直後、無音で回転のない球が飛んでくる。ふいにぶれた瞬間軌道が変わって曲がり、前衛ライトにいた奈緒の胸にぶつかって、「おろおろろ~」と叫びながらよたよたして転げる。
「大丈夫?」前衛レフトにいた杏奈が声をかけ、かおりに言った。
「もうちょっと手加減してあげて。バレー部なんだから」
ボールを受け取った彼女はそれを無視して、数回バウンドして構える。そして、さっきより強いサーブを放った。
ぎゅるぎゅる、と音が聞こえてきそうな前回転のボールが、獲物を狙うチータのように奈緒へと飛びかかってくる。音頭を踊るようにアンダーレシーブした左手は宙を切り、ボールが頭に当たってコートの後ろへ飛んでいく。
後衛センターにいた明日香が右手を挙げてから腰を落として、高々とレシーブ。
直後に「任せて」と杏奈の声が響く。みんなが見守る中、ゆったりとしたステップでタイミングを調整しながらジャンプして、軽くアタック。グラウンドの芝を蹴るような音がして、ボールがコートの中にバウンドした。
「あ、時間」葵が声を上げる。
少なくとも三試合しなければならない。奈緒のサーブが失敗した後からは、もう誰も助けてはくれなくなった。道子のサーブがワン レシーブで返されると、後衛センターにいたかおりが本気モードで、バックアタックを撃ち放った。そのボールは矢のごとく奈緒に迫る。
幸か不幸かボールは奈緒の左側に落ちてきたので、左手首でレシーブできた。だが同時に、プロレスラーの平手打ちのようは激音が響いて、受け止めた手が後ろに弾かれ、ボールは後方に飛んでいく。そのまま隣のグラウンドの真ん中辺まで転がっていった。この学校の校庭は広い上に、数区画に分かれており、サッカーが同時に何試合も行えるほどだったから、すごい距離だ。
後ろにいる暖乃がアンダーレシーブをすると、ボールは必ずこの子の後頭部に当たった。そのたびに「ごめーん、成瀬、わざとじゃないよ。わたし下手だから」と、彼女は悪びれる様子もなく嗤って言った。
それを見て鼻を吹いてにやけた魚子は、アンダーサーブでライトのバックへとボールを放る。そこにいた花は、あまり運動神経のよい子ではなく、受けるのに失敗。それを杏奈が飛び込んでワン ハンド レシーブ。ネットを越えた先でライトの雅と美紀がお見合いをしてしまい。サーブ権が杏奈チームに返ってきた。12対11へと点差は縮まっていたが、油断は出来ない。またもかおりにサーブの番が来たからだ。
眉が隠れるぱっつんバングの下に光るかおりの双眸を見て、奈緒は不安そうに杏奈に視線を送る。
「成瀬さん、ネットのそばに隠れているといいよ」
そう杏奈に言われて「うん」と頷いた奈緒が「いそげっ、いそげっ」とぴょこぴょこ走るが、かおりはそれを待たず、移動中の彼女めがけてサーブを放った。
すごい音を立てた直後、無音で回転のない球が飛んでくる。ふいにぶれた瞬間軌道が変わって曲がり、前衛ライトにいた奈緒の胸にぶつかって、「おろおろろ~」と叫びながらよたよたして転げる。
「大丈夫?」前衛レフトにいた杏奈が声をかけ、かおりに言った。
「もうちょっと手加減してあげて。バレー部なんだから」
ボールを受け取った彼女はそれを無視して、数回バウンドして構える。そして、さっきより強いサーブを放った。
ぎゅるぎゅる、と音が聞こえてきそうな前回転のボールが、獲物を狙うチータのように奈緒へと飛びかかってくる。音頭を踊るようにアンダーレシーブした左手は宙を切り、ボールが頭に当たってコートの後ろへ飛んでいく。
後衛センターにいた明日香が右手を挙げてから腰を落として、高々とレシーブ。
直後に「任せて」と杏奈の声が響く。みんなが見守る中、ゆったりとしたステップでタイミングを調整しながらジャンプして、軽くアタック。グラウンドの芝を蹴るような音がして、ボールがコートの中にバウンドした。
「あ、時間」葵が声を上げる。
少なくとも三試合しなければならない。奈緒のサーブが失敗した後からは、もう誰も助けてはくれなくなった。道子のサーブがワン レシーブで返されると、後衛センターにいたかおりが本気モードで、バックアタックを撃ち放った。そのボールは矢のごとく奈緒に迫る。
幸か不幸かボールは奈緒の左側に落ちてきたので、左手首でレシーブできた。だが同時に、プロレスラーの平手打ちのようは激音が響いて、受け止めた手が後ろに弾かれ、ボールは後方に飛んでいく。そのまま隣のグラウンドの真ん中辺まで転がっていった。この学校の校庭は広い上に、数区画に分かれており、サッカーが同時に何試合も行えるほどだったから、すごい距離だ。
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