愛するということ

緒方宗谷

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エピローグ

2.みんなのその後

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 加奈子は、相変わらず属性が定まらないでいた。大学にはLGBTQ+のサークルもあるが、そこには加わらなかった。特別悩んでいなかったからだ。有紀子とヒロちゃん以外には未だにカミングアウトしていない。
 異性愛者という選択肢を選んだ時のために、なんとか有紀子と陸と三角関係を構築したい、と密かに考えていた。それならどの属性でも楽しい日常が待っているはずだ、と思っている。バラ色人生を思い描いて、ムフフと笑う。
 ちなみにマラソン大会は15位だった。


 里美は国際的な大学に入学して、もともと得意な英語に磨きをかけている。日本の文化を世界に広めたい、と今まで興味を持たなかった自国の歴史に目を向けるようになった。
 もう一度外国に出たいとは思わなかった。わざわざ日本に来る外国人なら、日本に好意をいだいているはずだから、と将来は外国人向け国内旅行の会社で働こう、と考えていた。


 別れ際にあれだけ号泣した知恵だったが、陸への恋心はあっさりと退潮して、週3、4回合コンしている。以前より彼氏に求める基準が上がった。その基準を乗り越えられない男子ばかりで、知恵は毎日ため息をつく。
 陸への気持ちがすうっと消えてから、陸のことはすっかり話さなくなった。忘れたわけではないが、終わった過去のことだった。


 小栗と寺西が高校時代に画策した変態同盟で出かける話は、結局実現しなかった。陸が事件に巻き込まれたということもあったが、小栗と寺西が心配した陸達の関係が元に戻ったからだ。
 2人は相変わらず釣りに出かけていた。大学に進学してから(高校時代もそうだったが)はほとんど勉強していない。毎日バイト三昧だ。 
 理由は釣り。高校時代と違って全国どこへでも行けるようになった。レンタカーだったが、車を走らせると目の前の道路が世界中どもまでも繋がっているように思える。
 いつかはカナダで巨大なサーモンを釣ってみたい、と2人は夢を語り合った。


 島根と彩絵は、相変わらず世界中に異性はこの人しかいない、と想い合っていた。どちらも他の異性に欲情することはなかった。未だに美由紀が島根を誘惑しに来る。あんまりしつこいので、彩絵はニコニコしながら、何度もパンチ(ボディブロー)するそぶりを見せて威嚇した。


 美由紀は、島根に対して「子種だけでもいいから」、と身もふたもないことを言う。正確には、にらみを利かせる彩絵に言っていた。ただ、彩絵のいない所で島根を口説き落とそうとはしなかった。
 社会に出た大学のOBが、そろそろふるいにかけられる頃だ。一流企業に就職するも辞めてしまった者、芽が出ない者、落伍者は視界に入っていても目には映らない。社会で力強く生きていける才能のある者だけが目に映る。
 最近はその選別に忙しい。ただ、今のところ島根よりいい男は見当たらない、と思っていた。


 みんな色々あった。しばらくしてから再会したみんなはだいぶ変わって大人になっていたけれど、話すと中身は何も変わっていないようで、みんなお互いに安心する。
 
 有紀子は思った。
 
 ああ、振り返ると思い出があって前を見ると希望がある。だから何も考えなくても幸せに暮らせるんだな。
 今はいつになるか分からないけど、わたしは陸君と結婚して、子供を生んで、一緒のお墓に入る。特別大きなストーリーは無いけれど、愛する気持ちがあればどんな人生でも幸せな気がする。

 今日もいつもと同じ楽しい一日が始まる。

おわり

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