愛するということ

緒方宗谷

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49.合流

1.悲鳴  

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 時間をチラチラ気にする里美は、満足気に駅へと続く道の向こうを見た。時間は2時をだいぶ過ぎているが、今から行けば2時半前にはたこ焼き屋さんに到着できるだろう。
 それより早くに加奈子たちは町の靴屋を出て、既に駅の方に向かっていた。午後2時半前にはたこ焼き屋さんにつく予定だ。
 加奈子が、少ししょんぽりした声で言った。
「ごめんね有紀ちゃん、無駄に1日過ごさせちゃって。初めからドームの靴のこと話していれば、こんなことにならなかったのに」
「いいよ別に。十分楽しかったよ」
 2人が楽しくおしゃべりをしていたちょうどその時、見ず知らずの男が2人話しかけてきた。
 前にいたガタイのいいタンクトップ黒髪長髪が2人の進路を塞ぎ、少ししゃがれた感じの声で言った。
「ねえ、何してんの? 今暇なんじゃない? ちょうど2-2なんだし、これからカラオケ行かない?」
 もう一人は金髪のマッシュルームぽいベリーショートのネオウルフ。ホストよりも柄が悪い感じだ。ガムを噛みながらニタニタしている。
 初めてナンパされた有紀子は、怯えた表情を見せて言葉を失った。加奈子も同様で恐怖を感じていたが、有紀子を守らなければ、という心意気から、勇気を出して男達を睨みつける。
「他の子探せば!」
 加奈子は勇敢にもそう言い放って、長髪の横を通り抜ける。
「あ、ちょっと……」と声をかけようとするも取りつく島を与えない加奈子の背を睨みつけて、長髪は唾を吐く。ニタニタしていたキノコ頭も不機嫌に顔を歪めてガムを吐き出した。
 長髪に代わってキノコ頭が鼻で喋ったようなに声で食い下がる。
「いいじゃーん、俺らでもぉ」
 キノコ頭が2人を追って口説き続ける中、長髪がわきの道を見やって、工事現場があることに気が付いた。人気は無い。休工日のようだ。長髪は不気味な笑みを浮かべて一計を案じた。
 長髪がキノコ頭に小声で話しかけた時、少し離れただけの道を陸たちが歩いていた。加奈子たちに危険が迫っているなど露知らず、里美と陸は微笑みあう。
 里美が言った。
「夕食もこっちで食べていこうね。まだ時間はたっぷりあるから、たこ焼き食べようよ。
 それからゲームセンターに寄らない? UFOキャッチャーに欲しいぬいぐるみがあるの。モモタのやつ」
 陸は知恵とよく行ったゲーセンだと思ったが、言わなかった。
 2人が何気ないおしゃべりをしていた時、突然後ろの方から女性の悲鳴が聞こえた。2人は振り返るが、数人の歩行者が遠くに見えるだけで何事もない。勘違いかと思って前に向き直る。だが間を置かず、またも悲鳴が聞こえる。
「何だろうね陸君、痴話げんかかな?」里美が不安そうに悲鳴の出所を探す。
 陸が真剣な眼差しで道路を睨んで耳を研ぎ澄ませると、遠くから微かに言い争う声が聞こえた。
 駆け足で声のした方へ向かった陸が最初の十字路に着いて左の道を見やると、2人の女性が2人の男によって、別の道に連れ込まれるところだった。
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