愛するということ

緒方宗谷

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45.チーム里☆加奈

1.木陰の下で

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 村上加奈子のことばかり考えていた。
 雲一つない蒼々たる青空。天文学的な距離の向こうから、よく冷めもせずにやって来れるものだと、見えもしない太陽の熱を恨めしそうに私(里美)は見やる。
(何が残暑? 9月ってまだ夏まっただ中じゃないの!)
 今年は空梅雨だった。台風もまだ関東には来ていない。そういえば、ここ最近雨を見ていない。日照りで干物になりそう。日焼け止めを塗ってるけど、じりじりと肌が焼ける音がする。
 地球温暖化のせいで、東京も砂漠化してしまうのではないかという暑さだ。プール班とマラソン班に分かれての体育の時間。私はプールにすればよかったと後悔しながら、トラックを走っていた。
 学年別のマラソン大会(と言ってもただの体育)が近いから、結構多くの生徒がマラソンの自主練をしている。
 私達陸上部にとってマラソンは本領だから、誰にも負けるわけにはいかない。男子はサッカー部と野球部がライバル。女子はテニス部とバレー部がライバル。
 走るところ敵なし――と言いたいところだけれど、1年の時の男子の1位はサッカー部の岡崎君だった。女子の1位は、私と同じ陸上部の千鶴だったけど、ベスト10内の6人がテニス部とバレー部だったから、罰として先輩達にこっぴどくしごかれた。2年の時も同じようなもの。そして3度目、高校最後のマラソン大会。3年の面子があるから、昨年7位の私は順位を上げるべく、灼熱地獄の中一生懸命走った。
 ふと見ると、村上さんが木陰で涼んでいる。渡辺さんは一緒ではないようだ。2人共私と同じクラスだから、陸君のことすぐに話せるって思っていたけど、2人が1人1人の時ってなかなかない。
 この間、渡辺さんを捕まえた日以降、別々にいるところに遭遇していなかったから、今がチャンスだ。私はトラックから外れて、のんびり校庭で頑張るみんなを見ている村上さんのところへ行った。
 向かってくる私に気が付いた村上さんが、素っ頓狂な声で言った。
「ん? お? 何? 陸上部、もうお疲れなの? そんなんじゃ、今年は私に勝てないぞ?」
「何言ってんの、去年の村上さんって10位以内にも入っていないでしょ?」
「うん、23位か32位だったかな」
「だめじゃん」
「篠原さんは何だったの?」
「私? 私は7位」
「すご‼‼」
 前のめりになった村上さんは、目を見開いて私を「凄い凄い」と褒め称えた。
「女子にしておくのはもったいないな。もし男の子になってくれたら、私が付き合ってあげるよ」
「シシシシ」と笑う村上さんがそう言った後、私たちの間に会話が続かない気配が忍び寄った。でも私には話したいことがあったから、無言の陰を追い払う。


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