愛するということ

緒方宗谷

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44.渡り廊下の里美と有紀子

2.有紀子の強さ

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 勇気を出して私(里美)は言った。
「やっぱり、陸君には好きな人と付き合ってもらいたいの。
 噂が嘘だったなら、協力してくれてもいいでしょ? 2年の時みたいに陸君と渡辺さんと村上さんと3人で仲良くしてほしいのよ」
 渡辺さんは眉間にしわを寄せて、静かに私の話を聞いている。私は続けた。
「2年の坂本知恵も見た目と違って悪い子じゃないみたいんだけど、やっぱり陸君には村上さんの方がお似合いだと思うの」
 私の方が似合っていると言いたいけど、やっぱりここでも言えない。
「それでね……」
 渡辺さんが口を開いたのは、私が話を続けようとした時だった。
「何で私がそんなのに協力しなきゃいけないの?」
「え? だって」
 意外だ。大人しそうな渡辺さんでも怒ることがあるんだ。渡辺さんは少し声に力を込めて、ボリュームを上げる。
「私だって……、私だって陸君が好き。だから、その話には協力できない」
 私はビックリした。
「ええ⁉ そうなの⁉ それって四角……五角関係? いや、私はフェードアウトしたから、四角関係か」
 一瞬戸惑ったけど、私は言った。
「でも、陸君は村上さんが好きなんだよ」
「だから何なの? 私は陸君が好き。篠原さんも陸君が好きだって思ってたけど、違うみたいね」
 私はムカッとした。
「そんなことない。私だって好きだよ」
 そう言った私に向かって言い放った渡辺さんの言葉に、私は言い返せなかった。
「でも、諦めたんだよね?」
 答えられない私を見て勢いづいた渡辺さんが続ける。
「私は諦めない。加奈は友達だけど、絶対に陸君のことを振り向かせてみせるから」
 渡辺有紀子。こんなにも強い子だったんだ。私なんか足元にも及ばないじゃん。いや、いろんな意味で私の方が勝ってるけど。でもやっぱりだ。恋愛に関しては私、全然ダメなんだな。
 陸君は渡辺さんの気持ちを知ってるのかな? 村上さんは? そうか、村上さんて、渡辺さんの気持ちを知っているから、陸君の告白を断ったのかもしれない。たぶん間違いない。
 だって、陸君と村上さんとてもいい雰囲気だったもん。もし、相手が坂本や渡辺さんだったなら、私諦めなかった。
 でもすぐに思い直した。違うな、諦めていたと思う。だってそんな性格だもん。フェードアウトしたのは誰のせいでもない。私自身のせいだ。


 
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