愛するということ

緒方宗谷

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26.関係の変化

3.後悔

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 同じ頃、陸は常にムシャクシャしていた。なぜ加奈子に告ってしまったのか。そのせいで、友達としての関係がギクシャクしてしまった。
 あの日から、加奈子は陸によそよそしい。声をかけようとしても不意にどこかに行ってしまう。陸は激しく動揺していた。
 加奈子は、必要がある時は変わらず陸と話していたのだが、授業や当番の為であることがありありとしている。以前から有紀子の加わらない会話には消極的あったが、今はその時と違って、陸との会話そのものを嫌っているかのように振る舞う。完全に陸を拒絶しているようだ。
 加奈子と有紀子。親友の2人が、別の理由でギクシャクしていることに陸は気が付いていない。一時期、加奈子が学校に来なくなったのは、自分と有紀子との間でストレスを感じていて耐えられなくなったからだと考えた。
 陸は、1人塞ぎ込んでいた。何かがあったことは間違いない。クラスメイトのほとんどが気付いている。机にとっぷすその背中からは、刺々しさがありありと滲んでいたからだ。
 仲が良かった有紀子達とも話さなくなっていたから、みんなはすぐに大体の事情を察した(内容は間違っている)。クラスの中で陸と有紀子は両思いだと思われていたから、2人が別れたのだろう、と考えられていた。
 有紀子からすれば、親友を好いている相手だ。今まで自分は、陸に記憶を取り戻してもらって、ロマンチックな恋物語さながら両思いになることだけを夢見てきた。はっきりとそういう会話をしたことはないが、陸も暗にそう思ってくれている、と思っていた。
 しかし、全くそうではなかった。有紀子は度々そう思って、今までのやり取りを恥ずかしく感じる。付き合ってもいないのに、恋人でいる気でいたのだ。相手が好きなのは自分でなく、加奈子なのに。
 急速に孤立した陸は、転校生であるという事実も手伝って、噂話やいじめの対象になっていった。だが、直接の暴力は無い。けなすような会話をしたり、見下すようになったりする程度で、誰もイジメが形成されつつあることに気が付いていない。
 実際、イジメが形成され切ることもなかったし、ましてや熟成されることもなかった。陸は180cmの長身、細身だが贅肉が無いというだけで、しっかりとした体格だ。喧嘩が強かったわけではないが、力には多少の自信がある。
 中学3年の時、ゲーセンで遊んだパンチングマシーンでは、360kgを叩き出した。ただ、ゲーセンによって180㎏しか出ない所もあった。だから、実際のパンチ力は誰も知らない。しかし、少なくとも一緒にいた友達の2倍以上のスコアだったから、陸のパンチ力が群を抜いて強かったことは間違いない。
 陸は、人間関係の変化からクラスの中で孤立化しながらも、人並み外れた身体能力の高さから奈落への転落を免れている。だがそれも、後は陸次第だ。やじろべえの如く、刀のエッジで揺れていた。落ちるのか両断されるのか、誰にも分からない。誰かが彼に引導を渡せるわけではなかったから。
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