愛するということ

緒方宗谷

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22.夏休みの余韻が晴れて

1.視線

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 この学校は、あまりプールに関心が無いようだ。ちゃんとした授業は行われない。大抵、体育館でバスケをするか、プールに入るかを生徒がそれぞれ選ぶ。どちらも自習みたいなものだ。
 有紀子は泳ぐのが苦手だから、いつもは体育館にいる。いつもの女子メンバーでバレーをして遊ぶ。メンバーの中には加奈子もいる。水着になるのが嫌なんだそうだ。泳ぐのが好きで、夏休みだってあんなビギニを着ていたのに不思議だと有紀子は思った。
 有紀子の身長は155cmあって体重は4?kg、くびれもちゃんとあって足も長いので、スタイルは悪くないと自分でも思っている。しいて言うなら、B? Bだよね、うん、Bだ、という程度の胸。
 加奈子のスタイルは抜群に良い。女の子が見てもドキドキしてしまう十分すぎるほどのBカップ。温泉で有紀子に見せた体は、女神様の様な美しさだった。それを思い出した有紀子は、“私は普通の女の子です”と笑って、陸が言った加奈子に色気が無い、と言う言葉は絶対に嘘だと思った。
 今日の体育もプールにはいかない予定だった。でも珍しく、有紀子も加奈子もプールにいた。陸がプールを選択したからだ。
 小栗と寺西が陸を誘った。(あの顔は絶対エッチな内容で勧誘してるんだ)と思った有紀子は、陸に断ってほしいと願ったが、陸はプールを選んだ。初めは嫌がっていたが、小栗と寺西はしつこく陸の脇腹を突いて口説き落した。
 体育館を選んだとしても、有紀子と陸は別々の友達と遊ぶから一緒ではない。だから、陸がプールを選んで自分が体育館を選んでも関係なかった。でも、有紀子はプールを選んだ。陸が他の女の子の水着姿を見るのが嫌だったからだ。
 有紀子は、ぷくっと膨れてずっと陸を見ていた。加奈子はその心理に早くから気が付いていて、プールに付き合ってくれた。
 そうとは知らない後ろにいた桃子が、プールサイドで整列して座っている時に、有紀子に話しかけた。
「本当にやんなっちゃうよね、男子の目、どうして、この暑い中に体育でジャージ着なくちゃなんないの!」
 有紀子は訳が分からず、「何で?」と桃子に訊いた。
「走ると胸揺れるじゃん、男子がヤラシイ目で見るのよ、絶対エロい話してるよ。村上さんもそう思うでしょ?」
 有紀子と話していた桃子は、隣にいる加奈子に同意を求めた。
 桃子の胸はD近くもある。中学の時からみんなより大きかったらしく、体育の時は男子の視線が嫌で堪らなかった、と言う。
 周りを見ると、大抵の女子は男子の視線を嫌がる素振りをしながらも、まんざらではないように見える。みんなは嬉し恥ずかしい、といった風だ。でも、桃子だけは本気で嫌がっているように見えた。
 加奈子が答えた。
「そうだね、ま、妄想するくらいしか取り柄が無いんだから、魅了するだけ魅了して、おあずけしてあげましょうよ」
 余裕だ。笑みまで浮かべている。加奈子は明け透けとしていて、男子のそういうところにも理解を示す。

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