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15.旅行2日目
3.豪勢?な食事
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「ささ、おじさん、私の御酌で飲んでくださーい」加奈子がビール瓶を手に取って言った。
テーブルいっぱいにひしめき合う刺身、天ぷら、鍋物(各自1つ)、その他全てを網羅しているかのような豪勢な海の幸を目の前にして、みんなは目を奪われずにはいられなかった。本当に食べきれるのか? と思うほどの量だ。
加奈子のお酌の申し出に、「お、悪いね、加奈ちゃん」と、嬉しそうに道信がグラスを出しすと、「どこのおねーさんだよ」陸が茶々を入れる。
「陸君もコーラどーぞ、あ、有紀ちゃんの方がいいかしら」
あからさまに茶化す加奈子に、「どっちでもいいよ」と、つっけんどんに陸は答えた。
加奈子は、有紀子にコーラの瓶を渡して笑う。有紀子に陸の隣に行って注ぐように促してから、陸の父雄大とそれぞれの妻にビールを注いだ。
昨日の夕食はお刺身中心であったが、今日もお魚三昧。海の街だけあって海の幸で埋め尽くされている。
有紀子は、イセエビのマヨネーズ焼きを一口食べた後マグロのお刺身を食べて、お醤油と山葵の滲みたご飯を食べる。その間考える。加奈子は仕切るのが上手い。カラオケに行った時もそう思ったが、大人がいる席でもうまくやる。(お鍋だったら、あなたは鍋奉行だよ)と有紀子は思った。
「そういえば……」陸が口を開いた。「どこに旅行しても、大抵こんな料理だけど何でだろ? 海なし県に行ってもいつもお刺身が出るじゃん、僕、今までの旅行で夕食の印象薄いんだよね」
そう言えばそうだ。加奈子は去年山梨に行ったが、そこの夕食はお刺身だった。確かに印象が薄い。唯一の印象は、椎茸の傘にヨモギのぬたみたいなのを詰めて焼いた料理。初めて食べる味で不思議と美味しい。
「何笑ってるの?」と有紀子が加奈子に言った。
「んーん、去年の旅行の夕食の印象を思い出そうとしたんだけど、それが可笑しいの。旅館のパンフレットに、そこのご主人が猟師であるみたいなことが書いてあって、もし獲物が捕れれば、熊や猪料理を振る舞いますってコメントがあったの」
その話を聞いてワッと驚く有紀子に、加奈子が続けて言った。。
「でもね、その料理、私食べてないの。獲物が無くて普通の料理、陸君の言う通りお刺身」
「ははは、食べた料理より食べて無い料理の方が印象深いなんてね」
雄大の言葉に、みんななるほどと思って、口の中の物を庇いながら、苦しそうに笑った。
テーブルいっぱいにひしめき合う刺身、天ぷら、鍋物(各自1つ)、その他全てを網羅しているかのような豪勢な海の幸を目の前にして、みんなは目を奪われずにはいられなかった。本当に食べきれるのか? と思うほどの量だ。
加奈子のお酌の申し出に、「お、悪いね、加奈ちゃん」と、嬉しそうに道信がグラスを出しすと、「どこのおねーさんだよ」陸が茶々を入れる。
「陸君もコーラどーぞ、あ、有紀ちゃんの方がいいかしら」
あからさまに茶化す加奈子に、「どっちでもいいよ」と、つっけんどんに陸は答えた。
加奈子は、有紀子にコーラの瓶を渡して笑う。有紀子に陸の隣に行って注ぐように促してから、陸の父雄大とそれぞれの妻にビールを注いだ。
昨日の夕食はお刺身中心であったが、今日もお魚三昧。海の街だけあって海の幸で埋め尽くされている。
有紀子は、イセエビのマヨネーズ焼きを一口食べた後マグロのお刺身を食べて、お醤油と山葵の滲みたご飯を食べる。その間考える。加奈子は仕切るのが上手い。カラオケに行った時もそう思ったが、大人がいる席でもうまくやる。(お鍋だったら、あなたは鍋奉行だよ)と有紀子は思った。
「そういえば……」陸が口を開いた。「どこに旅行しても、大抵こんな料理だけど何でだろ? 海なし県に行ってもいつもお刺身が出るじゃん、僕、今までの旅行で夕食の印象薄いんだよね」
そう言えばそうだ。加奈子は去年山梨に行ったが、そこの夕食はお刺身だった。確かに印象が薄い。唯一の印象は、椎茸の傘にヨモギのぬたみたいなのを詰めて焼いた料理。初めて食べる味で不思議と美味しい。
「何笑ってるの?」と有紀子が加奈子に言った。
「んーん、去年の旅行の夕食の印象を思い出そうとしたんだけど、それが可笑しいの。旅館のパンフレットに、そこのご主人が猟師であるみたいなことが書いてあって、もし獲物が捕れれば、熊や猪料理を振る舞いますってコメントがあったの」
その話を聞いてワッと驚く有紀子に、加奈子が続けて言った。。
「でもね、その料理、私食べてないの。獲物が無くて普通の料理、陸君の言う通りお刺身」
「ははは、食べた料理より食べて無い料理の方が印象深いなんてね」
雄大の言葉に、みんななるほどと思って、口の中の物を庇いながら、苦しそうに笑った。
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