愛するということ

緒方宗谷

文字の大きさ
上 下
49 / 192
15.旅行2日目 

2.口ではそう言っても

しおりを挟む
「わ、わ、わ、ほんとに来るなよ」陸が叫ぶ。
 そこには手拭い一枚を腰に巻く陸の姿があった。平然と最初に覗いたのは加奈子だ。
「ほほー、なかなかよい体をしていますなー、陸君。
 ほらほら、有紀子もご覧なさいよ」と、加奈子は有紀子を覗きに引き込む。
「誘うなよ! 覗きを‼」と、つっこむ陸。
 言われるがままに仕方なく、と言った体(てい)で、加奈子と一緒の岩に登った有紀子は、恐る恐る竹の塀から顔を出した。目だけ。
「わ、すごい腹筋」
 スポーツはやっていないと言っていたが、結構鍛えられている。細マッチョというほどではないが、しっかりとゴツゴツしていた。腕の力こぶも結構あって、学校のプールで見る男子とはだいぶ違う。
 陸は恥ずかしくて脱衣所に行こうかと思ったが、大分距離がある。後ろを向けばお尻の割れ目が丸見えだ。恥ずかしくてそれは出来ない。仕方なく湯船につかって、しっしっ、と湯船の飛沫をかけた。
 有紀子が呟くように言った。
「陸君、結構育っているのね」
「有紀子、お前な、恥ずかしそうに目しか出していないわりに、何でそんながっつりと食い入るように見ているんだよ‼」陸が慌てた様子の声でつっこむ。
 女の子はそういうものなのです。例えば、誤って男子が着替えているところに出くわした時、「キャー」と叫びながら顔を覆っても、意外に指と指の隙間からガン見しているものなのです。有紀子は心でそう答える。
 有紀子の中の陸は、いつまでたっても7歳のままだったが、現実は違う。有紀子は、陸の成長に戸惑いながらも、想い出の陸に対してとは違う興味が湧いた。
「まあ、ご褒美にいいものを授けて進ぜよう」と、加奈子がにやける。
「きゃ、何よ、加奈子」
 笑いながら加奈子が、有紀子の肌をナデナデする。しかもどこを触っているのか、実況付きだ。有紀子は恥ずかしくなって、急いで岩を下りると湯船に浸かった。
 相変わらず、加奈子は覗きっぱなしで言う。
「陸君、混浴が無くて残念だね、私、陸君とだったら混浴してもよかったよ」
 どう答えればいいのだろう。恥ずかしげもなくよくそんなことが言えるものだと陸は思った。見上げると、加奈子は「シシシシシ」と笑っている。
 女湯では、いつの間にか知らないおばさんがジッと有紀子達をを見ていた。有紀子は会釈をして、手招きで加奈子を呼んだ。さすがに他人の前で男風呂を覗いてはしゃいでいるわけにもいかず、加奈子は静かになった。
「それじゃー、陸君、私達出るからね」と有紀子が言った。
「おう、気を付けてな」
 有紀子の声に答えた陸の言葉、「気をつけてな」。外を出ずに部屋まで行けるから危険な道のりは無いのだが、有紀子は嬉しかった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

律と欲望の夜

冷泉 伽夜
大衆娯楽
アフターなし。枕なし。顔出しなしのナンバーワンホスト、律。 有名だが謎の多いホストの正体は、デリヘル会社の社長だった。 それは女性を喜ばせる天使か、女性をこき使う悪魔か――。 確かなことは 二足のわらじで、どんな人間も受け入れている、ということだ。

ドクターダーリン【完結】

桃華れい
恋愛
女子高生×イケメン外科医。 高校生の伊吹彩は、自分を治療してくれた外科医の神河涼先生と付き合っている。 患者と医者の関係でしかも彩が高校生であるため、周囲には絶対に秘密だ。 イケメンで医者で完璧な涼は、当然モテている。 看護師からは手作り弁当を渡され、 巨乳の患者からはセクシーに誘惑され、 同僚の美人女医とは何やら親密な雰囲気が漂う。 そんな涼に本当に好かれているのか不安に思う彩に、ある晩、彼が言う。 「彩、      」 初作品です。 よろしくお願いします。 ムーンライトノベルズ、エブリスタでも投稿しています。

処理中です...