愛するということ

緒方宗谷

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7.陸と里美の出会い

2.一騎当千

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 里美は、陸に好意を寄せるようになっていた。顔も良いしガタイも良い。部活には属していないが、体育で見せる身体能力は高い。50m走6秒5らしい。陸上部から何人もの部員がお誘いに来ているようだ。
 クラスが違うから、体育での評判は聞くしかない。たが、時々授業が終わっても、休み時間いっぱいまで体育が延長していることがあった。
 クラス対抗でサッカーをしていると、大抵A組とB組は0対0でPKにもつれ込む。おかしな話だ。ベランダから見ていたみんなはそう思ったし、里美もそう思った。
 B組には、サッカー部の2年の主力がそろっている。来年は部長副部長になると思われる生徒もいた。それに対して、A組はバスケ部と野球部が中心で、サッカー部員はそれほどいない。A組でサッカー部の2年レギュラーは2人だけだ。
 誰がどう見てもA組には勝ち目がないにも関わらず、B組は負けることさえあった。勝ったとしても大抵はPKの結果だ。
 ベランダから見ていた男子たちが、陸を見て話している。
「ああ、あの転校生の足が速いからだな」
「伊崎が完全にマークされて、ボールに触れさせてもらえないんだ」
 里美のそばで見ていたサッカー部員がそう答えた。
 相手の男子が言う。
「この間まで、B組が20対0とかで勝ってたんだぜ、それが、ここ最近0対0だもんな。ウチのサッカー部が関東大会でベスト8に入れない理由だな」
 里美には、サッカーのルールはよく分からないが、サッカー部で実力があるのは、次期主将で2年のリーダーである伊崎だけらしい。その伊崎が陸にマークされると、途端に攻撃力を失うようだ。
 伊崎以外を使おうにも陸の足が速すぎて、ロングパスは全てカットされる。どんだけ走れるんだとみんなが感嘆の声をあげるほど、陸は走り続けた。
 おばあちゃんを助けた後、放課後里美は陸を待つようになった。しばらくしてから里美は陸に訊いた。
「陸君て、前の学校でサッカー部だったの?」
「いや、違うよ、帰宅部だった」
 里美は意外に思った。自宅とは反対方向だったが、里美は陸と帰りたくて、大抵遠回りして陸と一緒に帰っている。

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