愛するということ

緒方宗谷

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2.有紀子と加奈子 

5.変われない自分

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 だが、結局同じことを繰り返す。
 自宅からほど近い小さな公園には、ブランコと砂場と鉄棒があった。それ以外には植え込みがあるだけの何の変哲もない公園だ。
 夢の中で幾度も再現される出来事。何度見ても何を話していたか全く覚えていない。それでも悲しい夢であることは間違いない。目が覚めると、有紀子は大抵涙を流していた。
 見ている夢の中でも、有紀子と陸はいつも涙を浮かべていた。現実をトレースした夢であるが、結構いろんなことが省かれている。なんか、つらい想いをするために編集されているようだ。
 陸が引っ越すことを告げてから、実際引っ越すまでそれなりの時間があった。しかし、夢はその間の思い出を全てすっ飛ばして、急に引っ越し当日を迎える。
 肩に手を置いた父親に連れられていく陸は、寂しげに有紀子を見つめていた。最後は有紀子が何かを叫んで目が覚める。
 今日の朝は、一つ思い出したことがあった。
 
 「なぁ! 待ってろよ‼ 絶対戻って会いに来るからな‼」

 確かに陸はそう言った。起き上がった有紀子は、しばらくそのまま座っていた。目を閉じて、叫ぶ陸を何度も思い出す。軽く深呼吸して目を開けた有紀子は、少し笑みを浮かべた。
 考え方を変えたせいか、今日の夢はいつもより優しかった。でも、ますます好きになってしまった。陸のことは忘れて恋を探そう、と思ってはみたものの、心の深層はそれを拒んでいるのだと思う。
 朝起きた時は気分が良かったが、朝ご飯を食べ終わって家を出る頃には、少しムッとしていた。「いつか会いに来るから」か。……いったいいつ会いに来るのだろう。あんたホントに会いに来る気あるのか? と心でつっこむ。
 女心は複雑で、ムカつきながらも気分は良かった。でも空は曇っていた。ちょっとだけ気持ち良かったから、この際晴れてほしかった。そんな気分で、有紀子は学校へと向かう。
「何やってるの⁉ 早くしないと遅刻しちゃうよ‼」
 有紀子が国分寺駅の改札階に上がると、突然響いた加奈子の声に、有紀子は我に返った。
「あ~~‼ 起きてる⁉」加奈子大音量で叫ぶ。しかも耳元で。
「そんな大声出さなくても、ちゃんと起きてるよ」笑顔だった。
「?」
 息を整える加奈子は、微かな様子の変化に気が付いて言う。
「今日は機嫌がいいじゃん⁉」
「あっ、分かる?」
 そう有紀子が言った瞬間、学校のチャイムが鳴り響いた。
「でも完璧遅刻だね、学校は目の前なのに」
 笑顔の有紀子に、加奈子は一言返した。
「話が見えない」、、、と。
 

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